このページの本文へ移動

農林水産技術会議

メニュー

東北地方の多雪環境に適した低コスト再造林システムの開発

年度
2016
ステージ
発展
分野
林業・林産(造林)
適応地域
東北
キーワード
スギ・カラマツ、低コスト再造林、多雪環境、コンテナ苗、一貫作業
課題番号
25036B
研究グループ
森林総合研究所、岩手県林業技術センター、秋田県林業研究研修センター、山形県森林研究研修センター、
ノースジャパン素材流通協同組合
研究総括者
森林総合研究所 駒木 貴彰
研究タイプ
産学機関結集型A
研究期間
平成25年~27年(3年間)
PDF版
東北地方の多雪環境に適した低コスト再造林システムの開発(PDF : 717.4KB)

1 研究の背景・目的・目標

木材価格の低迷と高い造林コストが主因となり人工林の皆伐面積に対する植栽面積の割合は東北各県で毎年20~30%に止まっている。森林資源の循環利用と国土保全等の面から、再造林を確実に行うことが必要である。そのため、木材価格の上昇が当面期待できない状況では、再造林コストの大幅な低減を図らなければ、林業による収益向上は望めない。そこで、東北地方の多雪地において、地拵え、植栽、下刈りの初期育林コストを現在の50%程度削減する低コスト再造林技術を開発する。

2 研究の内容・主要な成果

(1) 積雪地で伐採作業用の機械(グラップル)を使用した地拵えの実証試験から、地拵え作業の経費では通常作業の60%以下、植栽作業では70~80%程度に削減できることを示した。

(2) 最大積雪深が1mから1.5mの多雪地帯でもスギやカラマツのコンテナ苗が裸苗と遜色ない成長をすること、東北地域13箇所のデータから活着率も平均94%と安定して高いことを明らかにした

(3) 下刈りについて、スギは植栽後2、3、5年生時に行えばよく、作業回数を半減できること、カラマツは植栽初期の2年間のみの実施でよく、作業回数を三分の一に削減できること、またワラビをカバークロップとして利用し、再生植生が抑制できること、加えて副収入を期待できることを明らかにした。

(4) 多雪地型の伐採・植栽の一貫作業を提示し、コストシミュレーションにより45~55%のコスト削減効果が期待できることを示した。

公表した主な特許・論文

(1) 松本和馬他.東北地方における低コスト再造林の実用化と課題.東北森林科学会誌 20(1), 1-15 (2015)

(2) 櫃間岳他.東北地方におけるスギコンテナ苗と裸苗の成長比較.東北森林科学会誌 20(1), 16-18 (2015)

3 今後の展開方向、見込まれる波及効果

(1) 多雪地での低コスト再造林技術が実証試験結果から提示され、現場での普及につなげることができる。

(2) 複数の県で造林補助基準にコンテナ苗の標準単価が設定され、また最低植栽本数基準の引き下げが行われるなど、造林作業の低コスト化に向けた政策的な取り組みの裏付けになる技術であることから、東北全体へのさらなる波及が期待できる。

(3) 育林コストシミュレーターの開発により、再造林作業の収支予測ができ、地域の状況に適した作業技術の選択が可能となる。

4 開発した技術・成果が実用化されることによる国民生活への貢献

(1) 育林コストが半減できるため、林業収益が高まり、林業従事者の待遇改善と造林未済地の減少に貢献できる。

(2) 震災復興への林業サイドからの貢献と、国土保全及び生物多様性の向上による国民への良好な森林環境の提供が期待できる。

(3) わが国の重要課題である地方創生と、国際的に関心が高い違法伐採対策や地球温暖化対策の面で国産材利用の拡大が期待されており、再造林コスト削減技術の開発は国内外の課題解決にも貢献できる。

この研究成果を活用しませんか?

この研究に関するご相談や質問等は、以下よりお問い合わせいただけます。

森林総合研究所

東北支所
TEL 019-648-3930

同じ分野の研究成果

林業・林産
竹林
バンブーリファイナリー技術開発による竹林有効利用の先進的九州モデル構築
林業・林産
木材利用
スギの圧縮と摩擦特性を活かした高減衰耐力壁の開発
林業・林産
育種
西南日本に適した木材強度の高い新たな造林用樹種・系統の選定及び改良指針の策定
林業・林産
竹林
侵略的拡大竹林の効率的駆除法と植生誘導技術の開発
林業・林産
森林病害虫
薬剤使用の制約に対応する松くい虫対策技術の刷新

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。

Get Adobe Reader