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農林水産技術会議

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製粉性及び加工特性に優れた米粉用の新たなイネシリーズの開発

年度
2016
ステージ
発展
分野
農業(水稲)
適応地域
全国
キーワード
イネ、米粉、製粉加工適性、 esp2 遺伝子、澱粉合成酵素
課題番号
25035B
研究グループ
農業生物資源研究所、日清製粉株式会社、
農研機構食品総合研究所
研究総括者
農業生物資源研究所 堀 清純
研究タイプ
産学官結集型A
研究期間
平成25年~27年(3年間)
PDF版
製粉性及び加工特性に優れた米粉用の新たなイネシリーズの開発(PDF : 1005.2KB)

1 研究の背景・目的・目標

米粉の増産は、米の消費拡大に貢献するとともに、米の特徴を活かした美味しい食品の開発を促進すると期待される。しかしながら、米粉は小麦粉に比べて割高なため、米粉の価格競争力を上げることは喫緊の課題である。本研究課題では、タンパク質と澱粉の生合成に関する基礎研究の成果を米粉用イネの開発に応用するために、主食用品種と識別性の高い画期的な米粉用イネのシリーズを開発して、各種米粉の製粉特性と加工適性の評価を基にヒット商品開発に向けた道筋をつくることを目指す。本研究課題では、米の製粉コストの削減に向け、低コスト化が可能なロール粉砕と変異系統の組み合わせについても検討した。

2 研究の内容・主要な成果

(1) 貯蔵タンパク質のグルテリン前駆体が多量に蓄積したesp2変異体の交配後代から、栽培特性が向上したイネ系統を選抜した。選抜系統は、精米歩留まりが高く、製パン性・製麺性に優れることを見出した。

(2) 球形の澱粉粒を持つ澱粉合成酵素の二重変異体が、他品種よりも複数の粉砕条件で製粉時の電力の負荷が低く、損傷澱粉量が低く、平均粒度が細かい米粉を生産でき、極めて優れた製粉特性を示すことを明らかにした。

(3) 貯蔵成分を合成する酵素遺伝子を24通りの組み合わせで持つ系統シリーズを作出した。

(4) 米粉パン特有の食感の一つである「しっとり」感の評価手法を確立した。米粉パンクラムの吸水比と試食を伴う食味官能試験の評価値の間に有意な相関関係を見出した。

公表した主な特許・論文

(1) Fukuda M. et al. A guanine nucleotide exchange factor for Rab5 proteins is essential for intracellular transport of the proglutelin from the Golgi apparatus to the protein storage vacuole in rice endosperm. Plant Physiol. 162(2), 663-674 (2013).

(2) 川越靖.米の澱粉粒のライブ観察 複粒形成の仕組みが見えてきた.化学と生物 51(7), 478-482 (2013)

(3) 堀清純.ゲノム情報を活用した日本水稲の品質や食味を制御する遺伝子の探索.食品科学工学会誌 (印刷中, 2016)

3 今後の展開方向、見込まれる波及効果

(1) 本課題で開発した製粉特性及び加工適性に優れた系統については、収量性をさらに向上させることで実用的な米粉用イネ新品種になり得る。

(2) 特徴的な貯蔵タンパク質と澱粉の特性を持つ米粉が生産できるようになり、小麦粉の強力粉、中力粉、薄力粉のような種子成分の違いによる用途に応じた使い分けが可能になる。

4 開発した技術・成果が実用化されることによる国民生活への貢献

(1) 従来の団子や和菓子等の用途に加えて、パン、麺、ケーキ等の小麦粉用途にも米粉の利用拡大が進み、米の生産量の拡大や新規の食品開発の推進に寄与する。

(2) 多様な米粉食品が開発、生産、加工、流通されるようになることで、毎日の食卓で米粉がよりいっそう身近な食材となる。

この研究成果を活用しませんか?

この研究に関するご相談や質問等は、以下よりお問い合わせいただけます。

農研機構

次世代作物開発研究センター
TEL 029-838-7404

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