ウシの小型ピロプラズマ病に対するワクチンの開発研究
- 課題番号
- 25034B
- 研究グループ
- 帯広畜産大学、 東海大学、
産業技術総合研究所、共立製薬株式会社 - 研究総括者
- 帯広畜産大学・原虫病研究センター 横山直明
- 研究タイプ
- 産学機関結集型A
- 研究期間
- 平成25年~27年(3年間)
- PDF版
- ウシの小型ピロプラズマ病に対するワクチンの開発研究(PDF : 932.4KB)
1 研究の背景・目的・目標
ウシの小型ピロプラズマ病は、マダニの吸血によって感染する赤血球内寄生性ピロプラズマ原虫によって引き起こされ、日本で広く発生している。感染したウシは貧血や発熱を呈し、大きな経済的被害を生じている。
我々はオリゴマンノース糖鎖被覆リポソーム(OML)を用いたウシ小型ピロプラズマ病ワクチンの開発に成功しており、本事業では1)共立製薬(株)への技術移転と評価、2)ワクチン作製法やウシ免疫解析法の改良、3)小型ピロプラズマ病の実態調査などを実施目標とした。
2 研究の内容・主要な成果
(1) 共立製薬(株)は、原虫解析、ワクチン製剤の調整・取り扱い、ウシ免疫解析法等の必要技術やノウハウをグループ連携機関より導入し、独自に再現・解析できるに至った。また、ウシ感染試験においてそのワクチン効果を確認するとともに治験認可に必要な種々の成果の集約に成功した。
(2) 東海大学では、簡便で再現性の高いOMLワクチンの実用的な大量作製プロトコールの確立に成功した。
(3) 産業技術総合研究所では、ワクチン効果判定のためのウシのTh1免疫(細胞性免疫)応答を実測できるELISpot法の実用的プロトコールを確立した。
(4) 帯広畜産大学では国内外の小型ピロプラズマの疫学調査を実施し、その汚染実態、マダニ対策の効果と問題点、遺伝子型別分布状況などワクチン開発に有用な情報を明らかにした。
公表した主な特許・論文
(1) 特許第5656209 ウシタイレリア症の病態評価を可能とする方法 (池原譲:産業技術総合研究所)
(2) Sivakumar, T. et al. Evolution and genetic diversity of Theileria. Infect. Genet. Evol., 27, 250-263 (2014).
(3) 猪熊壽他.小型ピロプラズマ病のためのマダニコントロール.臨床獣医, 3, 12-34 (2014).
3 今後の展開方向、見込まれる波及効果
(1) ウシ小型ピロプラズマ病ワクチンの製造販売承認申請を行い、その実用化を目指すとともに、Th1免疫誘導型OMLワクチンの動物用医薬品としての基盤技術を確立する。
(2) 汎用性の高い多価ワクチンへの開発展開やTh1免疫応答の診断監視体制の構築などが可能となり、家畜衛生において革新的な予防戦略を提供できる。
4 開発した技術・成果が実用化されることによる国民生活への貢献
(1) 清浄化が困難で被害の大きいウシ小型ピロプラズマ病に対する世界初のワクチン登場により、安全な放牧運営と安定的な肥育管理を達成できる。
(2) 予防法が確立されていないTh1免疫の補強を必要とする様々な感染症への応用展開が可能となり、OML技術による迅速で計画的な予防ワクチンを提供できる。
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帯広畜産大学
原虫病研究センター
TEL 0155-49-5649
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