難消化性澱粉構造と高水分吸収性を有する変異体米を用いた低カロリー食品の開発
- 課題番号
- 25033AB
- 研究グループ
- 秋田県農業試験場、九州大学大学院農学研究院
農研機構中央農業総合研究センター、亀田製菓(株) - 研究総括者
- 秋田県立大学 藤田 直子
- 研究タイプ
- 産学機関結集型A
- 研究期間
- 平成25年~27年(3年間)
- PDF版
- 難消化性澱粉構造と高水分吸収性を有する変異体米を用いた低カロリー食品の開発(PDF : 983.6KB)
1 研究の背景・目的・目標
我が国には、古くから広大な水田を維持し、安定して米を収穫するシステムが確立しているにもかかわらず、近年、米の需要が低下し、食料自給率の向上がみられない。また、生活習慣病による医療費の増大が問題となっており、特に糖尿病は国民の5分の1が糖尿病患者および予備群といわれている。本研究では、これらの農および医の問題を解決するために、難消化性澱粉(RS)を多く含む変異体米と高水分吸収の変異体米から低カロリー米候補を選抜・育種し、米飯・米菓の加工技術の開発基盤を構築することを目標とした。
2 研究の内容・主要な成果
(1) 高アミロース米を中心とした高RS米候補変異体10系統を用いた炊飯米のRS値を測定する手法を確立し、低カロリー米候補系統を3系統に絞り込んだ。
(2) (1)の変異体系統に超多収米品種の秋田63号を4回交配することで、種子重量が元の変異体の1.5倍にまで増加し、農業形質が向上した系統を確立し、個体選抜まで行った。
(3) 高RS米を用いた高温高圧処理によるパック米飯および米菓の製造技術を開発し、これを用いて単回におけるヒト試験を実施したところ、血糖値及びインスリン分泌の有意な抑制が認められた。
(4) 高水分吸収性を示す変異体2系統は、原因遺伝子が明確となり、分子マーカーによる育種が可能となった。
公表した主な特許・論文
(1)特許第5750635号 イネ変異体、澱粉の製造方法、澱粉、及びイネ変異体の製造方法 (公立大学法人秋田県立大学、秋田県)
(2) Toyosawa Y et al. Deficiency of starch synthase IIIa and IVb alters starch granule morphology from polyhedral to spherical in rice endosperm. Plant Physiology.170(3),1255-1270(2016)
(3) Tsuiki K et al. Alterations of Starch Structure Lead to Increased Resistant Starch of Steamed Rice: Identification of High Resistant Starch Rice Lines. Journal of Cereal Science. 68, 88-92(2016)
3 今後の展開方向、見込まれる波及効果
(1) 絞り込まれた高RS低カロリー候補米系統は、品種登録を目指して、農業形質、澱粉形質の調査を行っており、H30-31に申請見込みである。
(2) 商品化する際に想定される市場調査により、低カロリー米の需要が非常に高く、商品化が強く望まれていることが明らかとなった。
(3) 今後は、品種登録予定のないBC 2F 3種子を大量生産することで、テスト販売をフィードバックしながらの商品開発を行う予定である。
4 開発した技術・成果が実用化されることによる国民生活への貢献
(1) ダイエットは、国民の最大の関心事の一つであり、さまざまなダイエット食品が開発されている。本研究の低カロリー米が開発されれば、お米は太る、というマイナスイメージを払しょくでき、新たな米の需要およびそれらを用いた開発等で、地域活性化、雇用創出が可能となる。
(2) 我が国、特に秋田県では、高齢化が深刻であり、中高齢者の生活習慣病の代表格である糖尿病および予備群に対して、低カロリー米を取り入れた新たな食生活を提案するだけでなく、RSの機能性による便秘解消や大腸癌予防等も期待できる。
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