自然免疫修飾による健康増進を目指した高機能食品の開発
- 課題番号
- 25031AB
- 研究グループ
- 東京理科大学生命医科学研究所、東京薬科大学薬学部、オリエンタル酵母工業株式会社
- 研究総括者
- 東京理科大学生命医科学研究所 岩倉 洋一郎
- 研究タイプ
- 産学機関結集型A
- 研究期間
- 平成25年~27年(3年間)
- PDF版
- 自然免疫修飾による健康増進を目指した高機能食品の開発(PDF : 1202.4KB)
1 研究の背景・目的・目標
高齢化社会において、食を介した健康増進は医療費削減、生きがいある暮らしの創出へ向けた課題である。我々はこれまでに、海藻由来低分子βグルカン(BG)が大腸炎抑制作用を持つ事を明らかにすると共に、食品素材としてのBGの活性評価系を構築した。これらを足場とし、本研究では低分子BGの炎症抑制メカニズムを明らかにするとともに、他のアレルギー応答への影響、低分子BGの大量調製法、体内動態と安全性の検討、さらには人を対象とし有効性の検討を行い、機能性食品としての目処を付ける事を目的とした。
2 研究の内容・主要な成果
(1) 低分子BGは大腸で特定の乳酸菌を増やす事により、炎症抑制機能を持つT細胞を増加させ、大腸炎を抑制する事を明らかにした。 また、食物アレルギーなどのアレルギーも同様に抑制できることを示した。
(2) 乳酸菌増殖誘導能を持つ低分子BGの分子量範囲を特定し、パン酵母からこの分子量範囲の低分子BGを工業スケールで大量に製造する方法を開発した。
(3) 簡易なBG定量法を開発し、食品中や糞便中のBG量を正確に測定できる様になった。
(4) 酵母由来低分子BGを人に投与しても安全である事を確認した。つぎにこのBGを実際人に投与し、安全且つ腸内乳酸菌を効率良く増殖させる事を確認した。これらの成果により、アレルギー疾患の予防、抑制能を持つ機能性食品開発への確固とした科学的基盤を得るとともに、商品化への目処を得ることができた。
公表した主な特許・論文
(1) 特願 2014-056220. Composition and method for prevention, treatment, or amelioration of inflammatory or allergic disease or symptom, or for maintaining intestinal health.岩倉洋一郎、唐策、大野尚久 (東京理科大学)
(2) Tang, C. et al. Inhibition of Dectin-1 signaling ameliorates colitis by inducing Lactobacillus- mediated regulatory T cell expansion in the intestine. Cell Host Microbe. 18(3):183-97 (2015).
(3) 安達禎之. β-グルカンの物性解析におけるβ-グルカン結合性タンパク質の応用.応用糖質科学. 3(4): 51-53 (2013)
3 今後の展開方向、見込まれる波及効果
(1) 酵母を原料とした低分子量BGの摂取により、人の腸内乳酸菌を効率よく増殖させることができる事が解った。
この結果炎症性大腸炎や食物アレルギー、さらには花粉症などのアレルギーを抑制、緩和する事ができる事から、アレルギー疾患を未然に予防、緩和する商品として開発する。また、波及効果として、低分子BGは炎症性大腸炎や食物アレルギーの治療薬として開発する道が開かれた。
(2) BG定量法はキット化する事により、食品中のBG量の定量法として広く用いることができる。
4 開発した技術・成果が実用化されることによる国民生活への貢献
(1) 本研究成果を活用した低分子BG含有機能性食品を開発する事により、近年我国で急増している花粉症を未然に予防、軽症化することができ、国民の健康維持・増進に貢献するとともに、医療費を削減することができる。ちなみに花粉症の治療費は3千億円に上る。さらに、今後低分子BGが新たな治療薬として開発されれば、本農食事業から派生した技術として、大きく国民の健康増進に貢献する事になる。
(2) 本研究で創出されたBGの測定技術は、食品中のBG含量を測定する事を可能とした。多くの食品の免疫系に及ぼす影響を予測する事により、アレルギーを予防し、国民の健康維持に貢献する事が期待できる。

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