このページの本文へ移動

農林水産技術会議

メニュー

重力屈性に影響を及ぼす生理活性物質の開発と農林業への利用

年度
2016
ステージ
発展
分野
農業(環境)
適応地域
全国
キーワード
つる性雑草、重力屈性阻害物質、天然生理活性物質、分子プローブ有機合成、遺伝子解析
課題番号
25029AB
研究グループ
東京農工大学、九州大学先導物質化学研究所、
徳島大学、徳島文理大学、名古屋大学
研究総括者
東京農工大学 藤井 義晴
研究タイプ
産学機関結集型A
研究期間
平成25年~27年(3年間)
PDF版
重力屈性に影響を及ぼす生理活性物質の開発と農林業への利用(PDF : 1053.0KB)

1 研究の背景・目的・目標

つる性雑草のつるの巻きつき防止、植物の匍匐性や根の生長方向等には重力屈性が関与することが知られている。これまでにシス桂皮酸とその誘導体が重力屈性に影響することを見出した。そこで、シス桂皮酸の誘導体と分子プローブを合成し、重力屈性に影響を及ぼす物質を明かにする。また、シス桂皮酸以外の新たな重力屈性阻害天然物を探索する。これらの物質の作用を遺伝子レベルで明かにする。最も有望な物質を用いて圃場レベルで実用化をめざした試験を行う。

2 研究の内容・主要な成果

(1) シス桂皮酸誘導体を約350種合成し、地上部の重力屈性のみ、根部の重力屈性のみ、および双方を特異的に阻害する誘導体群を得た。最強の活性物質は10nMで重力屈性のみを阻害する活性を示した。

(2) シロイヌナズナ、アメリカネナシカズラ、レタス等を用いて重力屈性を検定する生物検定系を3つ開発した。

(3) 天然物から重力屈性を阻害する物質を探索し、食品成分や食品添加物として知られている芳香族ケトン系物質と揮発性のある環状ケトン類に新たに重力屈性阻害活性を見出した。

(4) 作用が強く人間や環境への安全性が高い天然物を用いて、電柱の支線に巻きつこうとするクズのつるの巻きつき防止試験を2年間実施した結果、春から夏の繁茂期でも巻きつきを抑制できることを明からにした。

公表した主な特許・論文

(1) 特願 2015-042924 シス桂皮酸類縁体、重力屈性調節剤 藤井義晴、他3名(東京農工大学、九州大学)

(2) 特願 2015-104742 新規化合物及び重力屈性調節剤 藤井義晴、他3名(東京農工大学)

(3) Okuda, K. et al. cis-Cinnamic acid selective suppressors distinct from auxin inhibitors. Chem. Pharm. Bull. 62, 586-590 (2014) .

3 今後の展開方向、見込まれる波及効果

(1) クズのようなつる性雑草の防除に利用できる。アレチウリ、外来種アサガオ類、アメリカネナシカズラなど、近年農作物への被害が拡大している外来のつる性雑草の防除にも適用可能である。

(2) 植物の伸長生長は阻害せず重力屈性のみ阻害する物質が得られた。これらの物質により植物の生長ベクトルを制御することで、雑草抑制、匍匐性植物の開発、果実の糖度上昇に利用できる可能性がある。

4 開発した技術・成果が実用化されることによる国民生活への貢献

(1) クズのつるの巻きつきを防止する資材を開発することにより、年間160億円と推定されるクズの防除に貢献する。また、クズの繁茂がもたらす野生イノシシの増加などの二次的被害を防止することができる。

(2) 生長を抑制せず重力屈性のみ阻害する物質から、新たな概念の雑草抑制剤の開発が期待できる。平成25年度の国内の除草剤市場は1,200億円であるが、その1%を代替すると10億円の経済効果がある。

(3) 更に基礎研究が必要であるが、被覆植物の開発、果実等の糖度上昇技術を開発できる可能性がある。

この研究成果を活用しませんか?

この研究に関するご相談や質問等は、以下よりお問い合わせいただけます。

東京農工大学

TEL 042-367-5625

同じ分野の研究成果

農業
水稲
洗練かつ高効率化したゲノム編集およびエピゲノム編集による超迅速イネ育種法の開発
農業
水稲
「ひとめぼれ」大規模交配集団を用いた有用遺伝子単離と遺伝子相互作用解明
農業
野菜
イチゴの輸送適性に優れる品種育成を迅速に実現するゲノム育種法開発
農業
野菜
イチゴの遺伝子解析用ウイルスベクターの構築と利用技術の開発
農業
生産資材
耐病性向上および根寄生雑草防除に活用するための菌根菌共生最適化技術の開発

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。

Get Adobe Reader