ウイルスベクターを用いたタンパク質生産用植物工場における生産システムの最適化
- 課題番号
- 25025A
- 研究グループ
- 東京大学大学院農学生命科学研究科
- 研究総括者
- 東京大学 松田 怜
- 研究タイプ
- Bタイプ
- 研究期間
- 平成25年~27年(3年間)
- PDF版
- ウイルスベクターを用いたタンパク質生産用植物工場における生産システムの最適化(PDF : 917.8KB)
1 研究の背景・目的・目標
植物に後天的に遺伝子を導入して、医薬用タンパク質を一過的に発現させる方法は、培養細胞などを用いる医薬用タンパク質生産法に比べて、生産コストが低い、生産規模の調整が容易である、新規医薬用タンパク質の開発や製造に要する期間が短いなどの特長を有する。本研究では、インフルエンザワクチンであるヘマグルチニン(HA)を対象として、高いワクチン生産量を得るための、植物工場における環境調節や栽培管理などの植物生産技術を開発することを目的とした。
2 研究の内容・主要な成果
(1) 遺伝子導入前の高窒素濃度の液肥施用により、植物の葉バイオマスあたりHA含量を増大できることを明らかにした。
(2) 遺伝子導入後の期間別気温制御が、葉バイオマスあたりHA含量の増大に有効である可能性を示した。
(3) 遺伝子導入直前に葉を植物個体から切離し、遺伝子導入および培養を行う、切離葉利用型医薬用タンパク質生産法の有効性を示した。
(4) 遺伝子導入直後の切離葉に、蒸散を促進させるための低湿度処理を行い、細胞間隙に浸潤した液体を除去することで、切離葉のバイオマスあたりHA含量を増大できることを見出した。
公表した主な特許・論文
(1) Fujiuchi, N. et al. Effect of nitrate concentration in nutrient solution on hemagglutinin content of Nicotiana benthamiana leaves in a viral vector-mediated transient gene expression system. Plant Biotechnol. 31, 207-211 (2014).
(2) Fujiuchi, N. et al. Removal of bacterial suspension water occupying the intercellular space of detached leaves after agroinfiltration improves the yield of recombinant hemagglutinin in a Nicotiana benthamiana transient gene expression system. Biotechnol. Bioeng. 113(4),901-906(2016).
3 今後の展開方向、見込まれる波及効果
(1) 一過性遺伝子発現法を用いた植物利用型医薬用タンパク質生産において、タンパク質生産量を最大化するための植物生産技術マニュアルの策定につながる。
(2) 切離葉を用いた医薬用タンパク質生産は、少量・多種類の医薬用タンパク質を生産する場合に、特に有効に活用されることが期待される。
4 開発した技術・成果が活用されることによる国民生活への貢献
(1) 植物利用型医薬用タンパク質生産が実用化されることで、感染症などに対する新規医薬品を迅速に生産・供給するためのプラットフォームが構築される。
(2) ワクチンや抗体などのバイオ医薬品を、これまでよりも安価に提供することに貢献する。

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東京大学大学院農学生命科学研究科
生物環境工学研究室
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