共生糸状菌に感染した害虫抵抗性イネ科牧草種子の安定生産、保存・流通技術の開発
- 課題番号
- 25024A
- 研究グループ
- 農研機構九州沖縄農業研究センター、東北農業研究センター、畜産草地研究所、中央農業総合研究センター
- 研究総括者
- 農研機構九州沖縄農業研究センター 荒川 明
- 研究タイプ
- Bタイプ
- 研究期間
- 平成25年~27年(3年間)
- PDF版
- 共生糸状菌に感染した害虫抵抗性イネ科牧草種子の安定生産、保存・流通技術の開発(PDF : 1170.6KB)
1 研究の背景・目的・目標
イネ科牧草の水田やその周辺での栽培は、コメの等級を下げる原因である斑点米カメムシ類の発生源となる場合があるため問題視されてきた。そこで、イネ科牧草と共生する共生糸状菌が害虫抵抗性を付与することに着目し、斑点米カメムシ類の発生を抑制する感染品種の育成に取り組んできた。しかし、種子の増殖・保存の際に共生糸状菌の感染率が低下することが実用化への妨げとなっており、これを解決するために、感染率の変動要因の解明、また、関連技術として植物体からの共生糸状菌の検出法の開発を目標とする。
2 研究の内容・主要な成果
(1)植物の穂内での感染部位の分布から、感染植物からの採種の際に非感染種子ができる機作が、共生糸状菌が植物の基部から伸長し、菌糸の分布域外で非感染種子ができることであることを明らかにした。
(2)既知の共生糸状菌検出用に開発されたリアルタイムPCR反応系のプライマー設計を修正することにより、種子1粒単位での菌の定量が可能な高精度の定量法を開発した。
(3) 共生糸状菌E. occultans およびE. uncinata の特性の違いを明らかにした。 E. uncinata が感染した植物は寒冷地で、 E. occultans が感染した植物は暖地で、植物体内の菌の濃度や種子の感染率が高くなる。
(4)気密パック・除湿剤を用いて、共生糸状菌感染種子を安定して高感染率に保つ保存技術を開発した。
公表した主な特許・論文
(1) Matsukura, K. et al. Dynamics of Neotyphodium uncinatum and N-formylloline in Italian ryegrass, and their relation to insect resistance in the field. J. Applied Microbiology 116(2), 400-407 (2014)
3 今後の展開方向、見込まれる波及効果
(1)共生糸状菌感染種子の保存技術は、芝用を含めた感染を謳う品種について、流通種子の品質向上に貢献すると期待される。
(2)共生糸状菌定量法は、感染植物の害虫抵抗性の迅速・簡便な評価方法として利用可能であり、感染植物を利用した害虫防除研究が加速すると期待される。
(3)採種の際の感染率の変動要因や菌種による種子伝染率の特性が明らかになり、今後、害虫抵抗性品種の育成・実用化へ向けた基盤となる。
4 開発した技術・成果が活用されることによる国民生活への貢献
(1)本研究成果を活用し、害虫抵抗性を安定的に発揮する共生糸状菌感染牧草品種が育成・普及に至れば、斑点米カメムシ類の発生が問題視される水田地帯でも高品質な牧草の生産が可能になり、粗飼料輸入量の低減、害虫発生の抑制による薬剤散布量の低減などに貢献することが期待される。
(2)共生糸状菌感染種子の保存技術を活用することにより、芝草等でも感染品種の種子が低コストで高品質に保たれて流通し、感染による耐ストレス性、病虫害抵抗性の能力が十分発揮される状態でユーザーに届くことが期待される。

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