新規な繁殖中枢制御剤開発による家畜繁殖技術と野生害獣個体数抑制技術の革新
- 課題番号
- 25022A
- 研究グループ
- 東京大学大学院農学生命科学研究科、
京都大学大学院薬学研究科、
名古屋大学大学院生命農学研究科 - 研究総括者
- 東京大学 前多 敬一郎
- 研究タイプ
- Aタイプ
- 研究期間
- 平成25年~27年(3年間)
- PDF版
- 新規な繁殖中枢制御剤開発による家畜繁殖技術と野生害獣個体数抑制技術の革新(PDF : 1073.8KB)
1 研究の背景・目的・目標
世界的な畜産物需要の急増や家畜の受胎率の低下に対応するためには、家畜の繁殖技術の革新が必要不可欠である。一方、野生害獣による農業への被害と、これに伴う営農意欲の減退による耕作放棄が、我が国の食料自給率のさらなる低下をもたらす要因となっている。本研究はこれらの問題を解決するために、ほ乳類の繁殖中枢制御機構を解明し、家畜の効率的生産を可能とする繁殖刺激剤と野生害獣の繁殖抑制剤を開発することを達成目標とする。
2 研究の内容・主要な成果
(1)卵胞発育中枢としてのKNDyニューロンの役割を明らかにすることにより、ほ乳類の繁殖中枢制御機構を解明した。
(2)ヤギにおいてκ受容体拮抗剤の皮下投与により、性腺刺激ホルモン放出ホルモンパルス発生機構の活動を促進することを明らかにし、κ受容体拮抗剤が繁殖刺激剤として有効であることを実証した。
(3)サル、ヤギ、ブタ、モルモットにおいてNK3受容体拮抗剤の経口投与により、性腺刺激ホルモンもしくは性ステロイドホルモンの血中濃度が減少することを明らかにし、NK3受容体拮抗剤が繁殖抑制剤として有効であることを実証した。
(4)自然環境中で不活性型に変換される新規NK3受容体拮抗剤を創製し、新たな繁殖抑制剤としての可能性を示した。
公表した主な特許・論文
(1) 特願 2015-215269 新規な化合物、薬剤およびNK3受容体拮抗剤 国立大学法人京都大学
(2) Uenoyama, T. et al. Lack of pulse and surge modes and glutamatergic stimulation of LH release in Kiss1 knockout rats. J Neuroendocrinol 27, 187-197 (2015).
(3) 前多敬一郎他.新たな中枢性繁殖制御剤のシーズ:KNDyニューロン.MPアグロ ジャーナル16, 17-21 (2014)
3 今後の展開方向、見込まれる波及効果
(1)本研究で創成した繁殖刺激剤 (κ受容体拮抗剤) は、ヤギ (ウシのモデル) において繁殖促進効果を示したため、薬剤の投与量、投与期間等の投与技術の開発を行うことにより、ウシにおける繁殖刺激剤としての利用が期待でき、産業動物の繁殖効率向上につながる。
(2)本研究で創成した繁殖抑制剤 (NK3受容体拮抗剤) は、サルやヤギ (シカのモデル)、ブタ (イノシシのモデル) において繁殖抑制効果を示したため、薬剤の投与方法や投与量等の投与技術の開発を行うことにより、野生害獣の個体数調節及び産業動物の繁殖効率向上につながる。
4 開発した技術・成果が活用されることによる国民生活への貢献
(1)本研究により創製された繁殖刺激剤は皮下投与で効果を示す。よって、末梢投与により家畜の繁殖効率を飛躍的に高め、安価な畜産物の供給を可能とすることが期待できる。
(2)本研究により創製された繁殖抑制剤は、野生害獣による農作物被害を抑え、農業者の意欲を高める。よって、このような繁殖制御剤の産業動物・野生害獣への応用は、国産農産物の生産を高めることが期待できる。

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