ムギ類ゲノム育種システムの高度化とミネラル制御遺伝子同定への応用
- 課題番号
- 25013A
- 研究グループ
- 岡山大学資源植物科学研究所
京都大学農学研究科 - 研究総括者
- 岡山大学 佐藤 和広
- 研究タイプ
- Aタイプ
- 研究期間
- 平成25年~27年(3年間)
- PDF版
- ムギ類ゲノム育種システムの高度化とミネラル制御遺伝子同定への応用(PDF : 992.9KB)
1 研究の背景・目的・目標
オオムギのゲノム情報が公開されたことによって、ゲノム育種システムの高度化が可能となった。さらに、オオムギの情報は、共通性の高いゲノムを持つコムギのゲノム育種に応用できる。本研究では、国産麦類の確保、海外の不良環境克服と穀物価格安定のため、(1)ムギ類のゲノム育種に必要なDNAマーカーのカスタム作製、(2)ムギ類相同遺伝子によるDNAマーカー作成システムの開発、(3)オオムギアルミニウム耐性遺伝子発現制御因子の単離およびムギ類のカドミウム制御QTLの同定を目標に研究を進めた。
2 研究の内容・主要な成果
(1)オオムギ36品種の塩基配列を解析して品種間多型を得た。二条、六条、裸麦の育成に使用する各々1000以上のマーカーシステムを開発した。DNAマーカー情報をデータベースに公開した。
(2)オオムギのアルミニウム耐性遺伝子HvAACT1の発現を制御する因子を特定した。
(3)オオムギ種子カドミウム含有率を制御するQTLを同定し、カドミウム含有率が低下するQTLを導入したオオムギ系統を育成した。
(4)コムギ40品種の塩基配列を解析し、データベース上に500以上のDNAマーカーを特定した。
公表した主な特許・論文
(1) Wu, D. et al. Genome-wide association mapping of cadmium accumulation in different organs of barley. New Phytologist 208, 817-829 (2015).
(2) Sato, K. et al. Improvement of barley genome annotations by deciphering the Haruna Nijo genome. DNA Research, 10.1093/dnares/dsv033 (2016)
(3)種苗登録申請 第28626号 はるな二条AT 岡山大学(育成者:佐藤和広、馬建鋒).
3 今後の展開方向、見込まれる波及効果
(1)国内のムギ類の品種改良では、近縁の材料同士を交雑することが多いので、既存の手法によるDNAマーカーの作成効率は低かったが、本研究によって大量のDNAマーカーを利用することが可能となった。今後はこの技術を活用して、病害抵抗性や高品質などの優良形質を持つムギ類の品種を効率よく育成できる。
(2)酸性土壌耐性をもつオオムギ品種、カドミウムの吸収の少ないムギ類品種を育成するためのDNAマーカーが利用可能となり、これらの不良環境においてもムギ類の栽培が可能となる。
4 開発した技術・成果が活用されることによる国民生活への貢献
(1)DNAマーカーをムギ類の品種改良に利用することで、醸造業、食品業などで必要とする良質な原料の安定供給に貢献できる。
(2)カドミウム吸収の少ないムギ類の品種育成や、酸性土壌で生育するオオムギの品種育成が可能となり、安心・安全な食品の供給に貢献できる。
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