イネ由来の新規除草剤抵抗性遺伝子HIS1の作用機構解明による品種開発と新剤創製
- 課題番号
- 25011A
- 研究グループ
- 農研機構作物研究所、埼玉大学、愛媛大学、株式会社エス・ディー・エスバイオテック、富山県、農業生物資源研究所放射線育種場
- 研究総括者
- 農研機構作物研究所 大島 正弘
- 研究タイプ
- Aタイプ
- 研究期間
- 平成25年~27年(3年間)
- PDF版
- イネ由来の新規除草剤抵抗性遺伝子HIS1の作用機構解明による品種開発と新剤創製(PDF : 1042.5KB)
1 研究の背景・目的・目標
HIS1は、一部の飼料イネ品種が新型の水稲用除草剤ベンゾビシクロン(BBC)および構造類似性のある他の薬剤に対して感受性を示す現象の原因遺伝子として、新たに見いだされたものである。
本研究では、このHIS1を中心に据え、HIS1を活用した品種開発やHIS1タンパク質の物性や機能の解明を基盤にした新規薬剤の開発など、農業技術としての実用化の基盤を創り出すことを目的として、様々なアプローチにより研究を進めた。
2 研究の内容・主要な成果
(1) HIS1によるBBC不活化に必須なアミノ酸残基の同定に成功し、除草剤分解活性を持たない類似遺伝子をBBC分解酵素活性型に改良することに成功した。
(2) HIS1によるBBC不活化のメカニズムを解明すると共に、HIS機能を阻害し、結果的にBBCの効果を一時的に増大させる新規化合物を発見した。
(3) イネ及び近縁種での網羅的なアリル解析により、BBC感受性イネを概ね4群に分類し、さらにBBC感受性程度の事前予測が可能であることを示した。
(4) BBC感受性の「タカナリ」及び「IR64」を抵抗性にした近似系統の開発に成功した。一方で、変異型HIS1を導入した感受性品種の開発も進め、その使用を前提とした「漏生籾制御モデル」を確立した。
3 今後の展開方向、見込まれる波及効果
(1) HIS1機能に必要な構造情報を基盤として、基質認識性や酵素としての性能を改善した新規遺伝子・酵素の創生を進める。
(2) HIS1機能阻害剤の実用化を進め、薬剤施用を最適化した環境に優しい除草体系の構築を進める。
(3) BBC抵抗性或いは感受性を付与した新品種群の開発を進めると共に、新規薬剤も活用し、異品種混入リスクを回避できる耕種体系を構築する。
4 開発した技術・成果が活用されることによる国民生活への貢献
(1) 飼料用イネ等の多用途利用米の栽培の障害となっている異品種混入リスクを低減させ、積極的に他用途利用米の導入に踏み切ることが出来るような品種及び技術システムを提供する。
(2) 新規薬剤の開発により最小の薬剤施用での最大の雑草制御効果を狙う雑草防除システムを構築し、省力化と環境負荷低減の両立を図る。
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農研機構
生物機能利用研究部門
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