酵素工学を活用した糖質資源高度利用プラットフォーム構築
- 課題番号
- 25010A
- 研究グループ
- 農研機構食品総合研究所、新潟大学大学院自然科学研究科、東京大学大学院生命科学研究科、石川県立大学(H25-26)、京都大学大学院生命科学研究科(H27)
- 研究総括者
- 農研機構食品総合研究所 北岡 本光
- 研究タイプ
- Aタイプ
- 研究期間
- 平成25年~27年(3年間)
- PDF版
- 酵素工学を活用した糖質資源高度利用プラットフォーム構築(PDF : 976.2KB)
1 研究の背景・目的・目標
生体糖鎖関連のオリゴ糖に関わる研究は幅広く行われており、種々の糖鎖関連オリゴ糖の機能性が知られるようになってきている。しかしながら、機能性が知られているオリゴ糖の大部分は実用的製造法がないため、試料の入手の困難さが研究の進展を阻む要因になっている。そこで、天然資源から安価に得られる糖質などの化合物を原料とした酵素反応により実用的生産技術のない機能性オリゴ糖を高効率で調製する汎用的な技術の開発を目的として研究を行った。
2 研究の内容・主要な成果
(1)アノメリックキナーゼとホスホリラーゼの組み合わせおよび二種ホスホリラーゼの組み合わせによるオリゴ糖の酵素合成プラットフォームの構築に成功し、オリゴ糖7種類を100 g単位で調製した。
(2)関連酵素の立体構造を6種解明するとともに、立体構造を元にした改変酵素を3種作出した。
(3)ヒトミルクオリゴ糖分解酵素である1,2-α-フコシダーゼを合成酵素に変換することにより、効率的なフコシル化オリゴ糖合成酵素の作出に成功した。
(4)37種のオリゴ糖の腸内細菌増殖活性および57種のオリゴ糖の免疫賦活活性をシステマティックに評価した。
公表した主な特許・論文
(1) Liu, Y. et al. Facile enzymatic synthesis of sugar 1-phosphates as substrates for phosphorylases using anomeric kinases. Carbohydr. Res. 408, 18-24 (2015).
(2)Nam, Y.W. et al., Crystal structure and substrate recognition of cellobionic acid phosphorylase, which plays a key role in oxidative cellulose degradation by microbes. J. Biol. Chem., 290, 18281-18292 (2015)
(3) Tsuda, T. et al. Characterization and crystal structure determination of β-1,2-mannobiose phosphorylase from Listeria innocua. FEBS Lett. 589, 3816-3821 (2015).
3 今後の展開方向、見込まれる波及効果
(1)汎用的なオリゴ糖の製造法が開発されたため、特に機能性糖鎖に含まれるオリゴ糖構造などが効率的に製造されるようになる。
(2)開発した製造法を活用することにより砂糖・澱粉などの糖質資源の高度利用が可能になり、新産業の創出につながる。
(3)多数のオリゴ糖のシステマティックな機能性評価結果を利用することにより、製造すべき機能性オリゴ糖を分子設計することが可能になる。
4 開発した技術・成果が活用されることによる国民生活への貢献
(1)従来製造法のなかったオリゴ糖が実用的に製造可能になることにより、新たな機能性食品素材が提供される。
(2)製造される機能性オリゴ糖が医薬品などの原料として活用されることにより、新たな医薬品が提供される。
(3)糖質利用の新産業が創出されることにより経済面で貢献する。
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