テンサイシストセンチュウの特性解明及び対策マニュアル暫定版の作成
- 課題番号
- 29032C
- 研究グループ
- 農研機構中央農業研究センター、龍谷大学、長野県野菜花き試験場、長野県農業革新支援センター
- 研究総括者
- 農研機構中央農業研究センター 岡田 浩明
- 研究タイプ
- 実用技術開発ステージ
重要施策対応型 - 研究期間
- 平成29年(1年間)
- PDF版
- テンサイシストセンチュウの特性解明及び対策マニュアル暫定版の作成(PDF : 1017.5KB)
1 研究の目的・終了時達成目標
長野県で我が国で初めて確認されたテンサイシストセンチュウ(Hs)の侵入源・経路、宿主植物の種類、防除方法を明らかにすることを目的とする。そのため、1) Hs国内系統の侵入経路解明のための基礎的遺伝子情報の収集と分析、2)接種試験によるHsの宿主植物種の解明、3)土壌中のHs密度を減らすおとり作物候補の選定、4)Hsによる作物被害が発見された場合の対策をまとめて生産関係者に配布するための暫定的マニュアルの作成を目標とする。
2 研究の主要な成果
(1)ミトコンドリアDNAの塩基配列情報に基づき系統樹を作成、検討した結果、Hs国内系統は韓国、ハワイ、オランダ系統と極めて近縁であり、侵入源に関する示唆を得た。
(2)Hs発生土壌を用いて栽培試験を行い、アブラナ科野菜やホウレンソウは根系に多数のシストが形成される好適な宿主であり、セルリ、パセリ、レタス等はシストの形成が皆無の非宿主と判定した。
(3)おとり作物探索のため、アブラナ科根こぶ病対策や緑肥として市販されているダイコン近縁種等について栽培試験を行った結果、ハダイコンの1品種が土壌中の線虫密度を75%減少させることを見出した。なお、ダイコンの一種では、シストの形成が見られたため、今後品種レベルでを精査することが必要であることが判明した。
(4)作物地上部の生育遅延と根部のシスト寄生との関連を調査した。トラクタの洗浄作業時間等を計測し、植物体や機械に付着したHsのまん延防止や使用可能な薬剤の情報を収集した。これらをまとめてマニュアル(暫定版)を作成した。
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
(1) Hs発生圃場の関係者には説明会や個別相談会を開催した。完成したマニュアルを普及指導機関に、ダイジェスト版を生産者やJAに配布して被害判定、防除、まん延防止対策の周知に努める。
(2) 宿主範囲やおとり作物候補の検討を品種レベルに広げるほか、DNA情報の収集を継続し、Hs侵入源の絞り込みを目指す。
【今後の開発・普及目標】
(1) 現地特産品目で宿主特性を解明。DNA診断等による現地圃場のHs定量化を実現。
(2) 宿主範囲解明やおとり作物選定の結論、Hs定量化手法を利用した防除体系を構築。
(3) 発生地域においてマニュアル最終版を普及させる。全国の宿主作物栽培地域にマニュアルを提示し、万一Hsが発生した時にも迅速に対応する体制作りに資する。
4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
(1) 長野県のアブラナ科野菜、ホウレンソウ生産額合計350億円の維持が期待できる。全国の同種野菜類の生産額合計6,100億円を維持するとともに、テンサイ産地へのHs侵入防止が期待できる。これは、北海道の輪作体系及び地場産業の維持にも貢献する。
(2) 高品質で安全な野菜類及び砂糖原料の国内生産維持によって質の高い国民の食生活実現に貢献する。
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農研機構
中央農業研究センター(岡田 浩明)
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