種子繁殖型イチゴのレベルアップ-採種効率を飛躍的に高めるイチゴ稔性制御技術の開発
- 課題番号
- 27015B
- 研究グループ
- 福岡県農林業総合試験場
農研機構・野菜花き研究部門 - 研究総括者
- 福岡県農林業総合試験場 和田 卓也
- 研究タイプ
- 産学機関結集型 Bタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- 種子繁殖型イチゴのレベルアップ-採種効率を飛躍的に高めるイチゴ稔性制御技術の開発(PDF : 1062.0KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
栄養繁殖による苗増殖が行われるイチゴは育苗と果実生産が重複する長時間労働、頻繁な病害虫防除が農家の負担となっており、負担軽減のために種子繁殖型イチゴの開発が求められるが、手作業が多い採種作業の低コスト化が課題となっている。栽培イチゴの品種間交配に由来するF1集団において見出した雄性不稔系統の雄性不稔性に関する遺伝解析を行い、雄性不稔に関するイチゴの染色体領域を同定、同領域近傍DNAマーカーを用いたイチゴの稔性制御技術の開発を達成目標とする。
2 研究の主要な成果
(1) イチゴ品種「福岡S6号(あまおう)」と「かおり野」の遺伝的背景では、雄性不稔が3遺伝子座により制御されることを発見した。
(2)DNAマーカーの識別精度を向上させ、幼苗段階でDNAを分析することにより雄性不稔個体を識別できる技術を開発した。
(3) 「福岡S6号」と「かおり野」以外の多数の品種・系統で、同様に3遺伝子座により雄性不稔・可稔が決定されることを明らかにした。
(4) 「福岡S6号」が雌性稔性回復に寄与する染色体領域を有することを明らかにした。
公表した主な特許・論文
(1) Wada, T. et al. Development of a Core Collection of Strawberry Cultivars Based on SSR and CAPS Marker Polymorphisms The Horticultural J. 86 (3): 365-378. (2017).
3 今後の展開方向
(1) 開発した雄性不稔個体識別技術を活用して、雄性不稔性が安定して種子生産量が多く果実品質も優れる種子親系統( F1 品種の母本)、および果実品質が優れる花粉親系統( F1品種の父本)を選抜する。
(2)選抜した親系統を交配して得られるF1系統の組合せ能力検定試験を実施し、採種性が優れると同時に果実品質も優れる世界初の雄性不稔利用イチゴ種子繁殖型品種の開発を行う。
【今後の開発・普及目標】
(1) 2年後(2019年)は、雄性不稔性を有するイチゴ種子親系統を3系統開発する。
(2) 5年後(2022年)は、雄性不稔利用種子イチゴのF1 品種を開発し、現地適応性検定試験を開始。
(3) 最終的には、育成した品種を種子繁殖イチゴの主力品種として1,200haの普及を図る予定。
4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1) 開発したイチゴ稔性制御技術が全国に普及して品種育成に活用されることで、低価格(従来比3分の1)でイチゴ種苗を供給可能な雄性不稔利用種子イチゴが開発され、イチゴ経営の安定化に貢献。現在はゼロに近いイチゴ種苗市場を約14億円創出、イチゴ生産額全体も400億円増加し2,000億円を達成。
(2) 他作物に比較して長時間労働が常態化しているイチゴ栽培を軽労化し、新規就農者の増加に寄与する。また果実としては高価格帯に属するイチゴを手頃な価格で消費者に届けることが可能となる。イチゴはビタミンCや微量要素のマンガンを豊富に含む果実であり、健康増進・疾病予防に貢献することができる。
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福岡県農林業総合試験場・生産環境部・バイオテクノロジーチーム
和田卓也
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