コナジラミ類をモデルとした共生機能阻害による低環境負荷型害虫防除資材の開発
- 課題番号
- 27014A
- 研究グループ
- 富山大学 大学院理工学研究部(理学)
理化学研究所 環境資源科学研究センター
群馬大学 食健康科学教育研究センター - 研究総括者
- 富山大学 土`田 努
- 研究タイプ
- 一般型 Bタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- コナジラミ類をモデルとした共生機能阻害による低環境負荷型害虫防除資材の開発(PDF : 1039.2KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
吸汁性害虫の多くは、体内に菌細胞と呼ばれる共生器官を持っている。菌細胞内には、特殊な細菌が存在し、害虫の生存や繁殖、ウイルス媒介等に重要な役割を担っている。本研究では、昆虫ー細菌ーウイルス間に存在する必須の共生機能分子を標的とした、タバココナジラミの防除資材開発を目的とする。本重要害虫の共生器官で発現し生存に必須な役割を果たすタンパク質や、トマト黄化葉巻病ウイルス(TYLCV)の媒介を担う共生細菌タンパク質を同定し、その機能を阻害する化合物を取得することを目標とする。
2 研究の主要な成果
(1) 共生機能を担うタンパク質を阻害する小分子化合物を検出するための、ハイスループットなスクリーニング系を複数種類構築した。
(2) ウイルス媒介を支える「共生細菌タンパク質- TYLCV外被タンパク質間相互作用」を阻害する化合物を取得した。
(3) タバココナジラミの共生器官で発現し機能する、生存に必須のタンパク質遺伝子を複数同定した。
3 今後の展開方向
(1) TYLCV媒介阻害化合物、および共生器官特異的タンパク質の機能阻害化合物の効果を室内実験および圃場実験で確認し、構造類似体の探索を通して、防除効果の高い防除資材の開発を目指す。
(2) 本課題で開発した共生機能タンパク質阻害化合物のスクリーニング系を活用し、菌細胞を持つ他の重要害虫種に対しても内部共生系を標的とした防除資材の開発を行う。
【今後の開発目標】
(1) 2年後(2019年)は、共生機能阻害候補化合物を生体投与して影響を確認する。
(2) 5年後(2022年)は、農薬メーカーと共同で、圃場で効果を示す安全な資材の開発を始める。
(3) 最終的には、製品を市販化することで、効率的な農作業環境や安心安全な食料、さらに野生生物にも配慮した持続可能型農業の形成に貢献すると見込まれる。
4 開発した技術シーズ・知見の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1) 本成果を基に選択性の高い新規害虫防除資材が開発されれば、殺虫剤抵抗性タバココナジラミについても特異的防除が可能となる。それにより、殺虫剤抵抗性害虫による被害を低減でき、農家の経営安定化に貢献できる。
(2) 本成果を基に特異的害虫防除資材が開発されれば、天敵昆虫や訪花昆虫には悪影響を生じなくなることが期待できる。天敵昆虫や、受粉昆虫密度が高く保たれるようになった圃場では、農作物の生産コストを低く抑えることができ、消費者には安全安心な食料や環境を提供することができる。
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