生物多様性の保全に配慮した在来種によるトマト授粉用生物資材の開発
- 課題番号
- 27013B
- 研究グループ
- (研)農業・食品産業技術総合研究機構畜産草地研究所、
(株)アグリ総研、(地独)北海道立総合研究機構農業研究本部花・野菜技術センター - 研究総括者
- 京都産業大学総合生命科学部 高橋 純一
- 研究タイプ
- 産学機関結集型 Bタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- 生物多様性の保全に配慮した在来種によるトマト授粉用生物資材の開発(PDF : 970.2KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
北海道において、セイヨウオオマルハナバチの代替となる花粉媒介用在来種エゾオオマルハナバチの安定的・継続的に飼育する技術を開発するとともに選抜育種による高繁殖能力・高授粉能力を持つ系統の作出を最終目標とする。
2 研究の主要な成果
(1)エゾオオマルハナバチの営巣、交尾、休眠の成功率を向上させるための各種条件を見つけ出し、累代飼育方法を確立した。国産マルハナバチの室内生産が可能になった。
(2)動物育種BLUP法を改良したマルハナバチ用の選抜育種モデルを開発した。トマト授粉能力の高い優良系統の選抜育種が可能となった。
(3)累代飼育系統のエゾオオマルハナバチのコロニーの働き蜂は、トマトハウスにおいて高い訪花能力を示し、セイヨウオオマルハナバチと同等の品質のトマトを生産できるようになった。
(4)女王バチの糞便サンプルを使用し、施設導入前に感染の有無を特定する技術を開発し、施設の衛生条件を向上させ、病原微生物フリー個体を維持できるようになった。
公表した主な特許・論文
(1) Takeuchi et al. Genetic structure of the bumblebee Bombus hypocrita sapporoensis, a potential domestic pollinator for crops in Japan. J. Apic. Res.57, 203-212. (2018).
(2) Nomura & Takahashi. Comparison of four mating systems for maintenance of bee colonies in terms of the inbreeding coefficient and effective population size. J. Anim. Genet. 46, inpress. (2018).
3 今後の展開方向
(1)エゾオオマルハナバチにおいて、トマトの授粉能力が高い系統については、累代飼育による増殖を進めながら、飼育に掛かる生産コストの低減を図り、商品化を目指す。
(2)人工累代増殖したエゾオオマルハナバチ利用による、ハウス内でのトマトの品質および生産性を向上させる授粉技術を確立する。
【今後の開発・普及目標】
(1) 2年後(2019年度)には、エゾオオマルハナバチの低コスト室内大量生産技術を開発する。
(2) 3年後(2020年度)には、エゾオオマルハナバチの商品化を目標とする。
(3) 最終的には、北海道におけるトマト授粉用マルハナバチをセイヨウオオマルハナバチからエゾオオマルハナバチに完全に置き換える。
4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1) エゾオオマルハナバチの生物資材としての商品化と普及により、北海道産トマトの安定した生産と販売が見込まれ、約1.5倍増の323億円(生産額)になるとことが見込まれる。
(2) エゾオオマルハナバチの実用化により、特定外来生物のセイヨウオオマルハナバチを使用せずにトマトの生産が可能になり、北海道の生態系の保全対策にも効果がある。
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京都産業大学総合生命科学部
高橋純一
075-705-1411