ウメ輪紋ウイルスの早期根絶を支援する感染拡大リスク回避技術の構築
- 課題番号
- 27010C
- 研究グループ
- 農研機構果樹茶業研究部門、法政大学、東京都農林総合研究センター、愛知県農業総合試験場、
農研機構(中央農研・農環研) - 研究総括者
- 農研機構果樹茶業研究部門 八重垣 英明
- 研究タイプ
- 現場ニーズ対応型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- ウメ輪紋ウイルスの早期根絶を支援する感染拡大リスク回避技術の構築(PDF : 687.5KB)
1 研究の目的・終了時達成目標
平成21年4月、東京都青梅市のウメにおいて、それまでわが国で報告のなかったウメ輪紋ウイルス(プラムポックスウイルス、PPV)による病気が確認され、果樹農業への被害が懸念されたことから、国では根絶を図るための防除が実施されている。PPVの早期根絶を実現するためには、発生地域内での感染拡大の防止、防除区域における再感染防止を可能とする知見の集積や技術開発が必要である。このため、本研究ではPPVの早期根絶を支援することを目的とした知見の集積とそれらを活用した技術開発を目標とする。
2 研究の主要な成果
(1)スモモの果実にPPVの感染による症状を確認でき、果実生産上の被害リスクが示された。
(2)PPVを媒介するアブラムシの防除において、秋季防除は翌春の幹母発生期から幹母由来の幹子増加期までの密度抑制効果が高く、早春季防除と併せて実施するとより高い効果が得られることを確認した。
(3)ノボロギクやサクラが実験的にはPPVの宿主となり得ることを確認したが、自然界でPPVの感染源となるリスクは無視できる程度に低いと評価した。
(4)発見された病樹周辺の全樹伐採あるいは全樹調査をすべき区域は半径125mが基準となることが示唆された。
公表した主な特許・品種・論文
(1) Kimura et al. Surveys of Viruliferous alate aphid of plum pox virus in prunus mume orchards in Japan. Plant dis. 100, 40-48 (2016).
(2) 加藤綾奈他.ウメ輪紋ウイルスの拡散防止を主眼とした春季におけるアブラムシ類の防除体系.関東東山病害虫研究会報 62, 160-165 (2015).
(3) 加藤綾奈他.秋季にスモモに飛来するアブラムシ類に対する薬剤の防除効果.関東東山病害虫研究会報 62, 166-170 (2015).
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
(1) 東京都や愛知県等のPPV発生地において、アブラムシ媒介特性の解明に基づいた効果的な防除体系の活用が始まっており、今後もPPVの根絶に向けた技術の普及に努める。
(2) 国が実施する調査や防除への活用が見込まれる。
【今後の開発・普及目標】
(1) 2年後(2019年度)は、行政が実施する各種調査および根絶確認に活用される。
(2) 3年後(2020年度)は、行政が実施する各種調査および根絶確認により、国内のPPVが根絶される。
(3) 最終的には、国内における核果類果樹(ウメやモモなど)の持続的・安定的な生産が可能となる。
4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
(1) PPV発生地においてウイルスの根絶が達成されることにより、国内の核果類果樹(年間産出額:約1,000億円)の持続的かつ安定的な生産が可能となると見込まれる。
(2) 本研究の成果を活用した調査や防除を実施することによって、今後、新たな発生地におけるまん延防止や早期の根絶が可能となり、我が国の果樹産業の安定的な発展への貢献が期待できる。
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