弱熱耐性果樹の白紋羽病温水治療を達成する体系化技術の開発
- 課題番号
- 27009C
- 研究グループ
- 農業・食品産業技術総合研究機構、広島大学、長崎県農林技術開発センター、千葉県農林総合研究センター、山形県農業総合研究センター、岡山県農林水産総合センター、長野県果樹試験場、片倉コープアグリ株式会社
- 研究総括者
- 農業・食品産業技術総合研究機構 中村 仁
- 研究タイプ
- 現場ニーズ対応型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- 弱熱耐性果樹の白紋羽病温水治療を達成する体系化技術の開発(PDF : 1095.1KB)
1 研究の目的・終了時達成目標
ナシ、リンゴ、ブドウの白紋羽病を治療する技術として50℃の温水を罹病樹周辺に点滴する温水治療が実用化されたが、熱に弱いビワ、サクランボ、モモに対しては温水治療は実施できなかったことから、本課題でそれを可能にする。温水治療効果は土壌微生物の働きによって増強できることから、圃場における土壌微生物性を把握するための土壌診断法を開発するとともに、土壌微生物性が好ましくない場合であっても新たに微生物資材を投入して向上できる技術を開発することによって、従来より低温の温水を使用した白紋羽病の体系的な温水治療法を構築する。
2 研究の主要な成果
(1)45℃の低温水を用いたビワ、サクランボ、モモ白紋羽病の温水治療技術を開発した。
(2)土壌微生物性(土壌の白紋羽病抑止性)と低温水処理による白紋羽病菌の死滅効果および白紋羽病の治療効果との間での正の相関がある傾向が認められたことから、温水治療の実施に併せてあらかじめ圃場の土壌の当該抑止性を把握できるように民間企業(片倉コープアグリ株式会社)で分析受託を開始した。
(3)選抜された市販の微生物資材[トリコデルマ(Trichoderma)属の糸状菌を含む]を用いて圃場の土壌の白紋羽病抑止性を向上させる技術を開発すると同時に、上記の3樹種における45℃低温水の処理との併用効果を現地圃場で実証した。
(4)低温水条件による白紋羽病菌の衰退(死滅)に伴い、トリコデルマ属などの糸状菌、エンテロバクター (Enterobacter)類などの細菌が菌糸周辺で優占することを明らかにした。
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
(1)低温水を用いたビワ、サクランボ、モモ白紋羽病治療技術のマニュアル(簡易版)を作成し、印刷物配布とウェブ公開を行うとともに、技術説明会等により全国の果樹産地に普及を進める予定。
(2)土壌微生物性(土壌の白紋羽病抑止性)の評価方法および民間会社での分析受託の開始に関する紹介ビラを作成し、マニュアルと併せて印刷物配布とウェブ公開を行い、全国の果樹産地に普及を進める予定。
【今後の開発・普及目標】
(1) 2年後(2019年)は、既に実用化されているナシ、リンゴ、ブドウ白紋羽病の温水治療技術を含めたマニュアル(完全版)を作成して技術の普及を推進。
(2) 5年後(2022年)は、果樹産地(5県)に土壌診断を踏まえた体系的温水治療技術を普及。
(3) 最終的には、白紋羽病被害が発生している20都道府県等への技術普及を目指す。
4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
(1) 低温水を用いたビワ、サクランボ、モモ白紋羽病の治療技術の普及により、ビワ、サクランボ、モモの主産県では年間数千万円の経済効果が期待できる。
(2) 本研究で開発した治療技術の普及によって、化学農薬に依存しない、環境負荷のない防除対策が進められることから、安全かつ環境に配慮した農業と農産物の安定生産および供給に貢献できる。
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農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門
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