新しい作用メカニズムにより多種作物で利用可能な新型抵抗性誘導剤の開発
- 課題番号
- 27006B
- 研究グループ
- 福井県立大学生物資源学部、長浜バイオ大学バイオサイエンス学部、農研機構中央農業研究センター
クミアイ化学工業株式会社 - 研究総括者
- 福井県立大学 仲下 英雄
- 研究タイプ
- 産学機関結集型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- 新しい作用メカニズムにより多種作物で利用可能な新型抵抗性誘導剤の開発(PDF : 926.1KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
植物には、植物ホルモンのひとつであるサリチル酸の働きにより全身で病原菌に抵抗性をもつようになる免疫システム(全身誘導抵抗性)が備わっている。これを活性化する農薬である抵抗性誘導剤は、イネを病気から予防的に守るために広く利用されている。しかし、トマトなどの園芸作物等では、この抵抗性誘導剤は生育障害を起こしてしまうため、利用できていない状況である。一方、新たに見出されてきた植物の免疫システムであるプライミング機構は、園芸作物でも生育には悪影響がないことが分かってきた。本研究では、良好な生育と病害防除の両立が可能なプライミング機構に着目し、このプライミング機構を活性化することにより様々な作物で利用できる新型抵抗性誘導剤を開発することを目標とする。
2 研究の主要な成果
(1)トマト、キュウリ等の園芸作物において生育に影響がなく、キュウリ炭疽病等に対しても利用可能なプライミング機構を活性化する新型抵抗性誘導剤を開発するためのリード化合物を取得した(リード化合物1,2)。
(2)現在使用されている抵抗性誘導剤とは異なる新しい作用メカニズムを持つことにより、現在の抵抗性誘導剤と併用または代替することが可能な新型抵抗性誘導剤を開発していくためのリード化合物を取得した(リード化合物3,4)。
(3)プライミング機構を活性化する化合物を効果を検定する実験系を確立し、新しい抵抗性誘導剤を効率的に創製するため評価系を構築した。
3 今後の展開方向
(1)リード化合物の化学構造を様々に変えて効果を検定することにより、活性が向上した新型抵抗性誘導剤を創製し、企業を中心とした共同体を形成し、園芸作物で利用できる抵抗性誘導剤を商品化するための実用化研究を進める。
(2)開発した薬剤の効果を様々な作物のポット試験や圃場試験で評価することにより、それらの抵抗性誘導剤が適用できる作物と病害の範囲を広げる。
【今後の開発・普及目標】
(1) 2年後( 2019年)は、製品化する化合物を決定し、製剤化・安全性試験等の実用開発を進める。
(2) 5年後(2022年)は、必要な圃場試験・安全性試験等を終了して農薬登録に着手する。
(3) 最終的に新しい作用メカニズムをもつ抵抗性誘導剤として製品を市販する。
4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1) 園芸作物への新型抵抗性誘導剤の導入により、新しい防除技術による病害の10%低減により約490億円の増収、殺菌剤散布回数の減少による農薬使用量の20%削減により約40億円のコスト削減になる。
(2) 様々な作物での殺菌剤使用量の削減により、生産者には農作業の省力化とコスト削減を提供し、生産者・実需者には競争力のある農産物を提供し、消費者には安心・安全な食と環境の保全を提供する。
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