シソサビダニが引き起こすオオバのモザイク病およびさび症の防除体系確立
- 課題番号
- 27001C
- 研究グループ
- 農研機構中央農業研究センター、高知県農業技術センター、愛知県農業総合試験場、大分県農林水産研究指導センター、学校法人法政大学、高知県中央東農業振興センター
- 研究総括者
- 農研機構中央農業研究センター 久保田 健嗣
- 研究タイプ
- 現場ニーズ対応型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- シソサビダニが引き起こすオオバのモザイク病およびさび症の防除体系確立(PDF : 980.8KB)
1 研究の目的・終了時達成目標
オオバ(青シソ)の生産で問題となるシソサビダニと、本虫により媒介されるエマラウイルス属のシソモザイクウイルス(PMoV)が引き起こすモザイク病に対する、効果的な防除技術の開発を目的とする。このため、サビダニとウイルスの生態を解明し、これらに対する診断技術を開発する。また、シソサビダニに対する、利用可能な農薬の登録促進、および生物的・物理的防除技術を開発し、これらを活用した総合防除体系を確立する。防除体系はマニュアル化し現地で普及させることで、モザイク病等による被害の発生を80%抑制することを達成目標とする。
2 研究の主要な成果
(1) シソサビダニの増殖や分散能力等生態的特性、およびウイルスの媒介特性等を明らかにした。
(2) シソサビダニに対する殺虫剤4剤のデータ取得により農薬登録に貢献し、さらに数剤の登録のためのデータを取得済み。
(3)耕種的防除法、および使用前可能日数等を考慮した薬剤防除暦とを組み合わせた、効果的な防除体系を開発した。現地実証試験において90%以上の被害抑制効果を確認した。
(4) シソサビダニとPMoVの簡易診断技術、サビダニ類とエマラウイルス属を幅広く検出できる診断技術を開発した。
公表した主な特許・品種・論文
(1) 特願 2017-131374 ウイルス診断法(出願人:(国研)農研機構)
(2) 久保田健嗣. フシダニ類で媒介されるエマラウイルスと作物への被害. ウイルス. 67(1), 37-48, 2017.
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
(1)モザイク病が問題となっている愛知県、高知県、大分県で技術普及のための発表会を開催した。さらにモザイク病の発生が確認された茨城県を加え、オオバ生産量の9割を占めるこれら4県において、今後も継続的に生産者や市民への啓発活動等を行い、発生防止につとめる。
(2)防除技術の選択肢を広げるため、さらに農薬登録を促進するとともに、有機農業等においても利用できる技術としてシソサビダニへの有効性が確認されたカブリダニ類等天敵や微生物防除資材の実用化を図る。
【今後の開発・普及目標】
(1) 2年後(2019年度)は、防除体系の普及により全国のモザイク病による経済被害をほぼゼロに抑制。
(2) 5年後(2022年度)は、天敵や微生物農薬等、生物資材を核とした防除技術を開発する。
(3) 最終的には、生物資材によりシソサビダニおよび難防除微小害虫による被害を無視できるレベルに抑制。
4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
(1) モザイク病の想定被害額12.2億円のうち、本技術の普及により最大90%の被害が抑制できるため、出荷額の10億円以上の増大と、収穫物の品質向上による経済効果が期待される。
(2) 本研究の成果を活用したオオバ栽培技術の普及によって、今後、オオバがより安定的に生産され、収穫作業等での産地の雇用拡大により地域経済への貢献も期待できる。
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