炭素・窒素・硫黄メタボリックフローの統合的改変育種によるエルゴチオネイン発酵生産技術体系の開発
- 課題番号
- 26027AB
- 研究グループ
- 筑波大学、北海道大学、東京工業大学、
味の素株式会社、株式会社島津製作所 - 研究総括者
- 筑波大学 大津 厳生
(平成27~28年度 奈良先端科学技術大学院大学) - 研究タイプ
- 産学機関結集型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- 炭素・窒素・硫黄メタボリックフローの統合的改変育種によるエルゴチオネイン発酵生産技術体系の開発(PDF : 856.7KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
シーズ創出ステージ(※)で構築した高システイン生産大腸菌を用いて、一層の安価な硫黄源の利用効率の向上とシステイン生産性の向上を図る。さらに、高システイン生産大腸菌を基盤に、合成生物学的にエルゴチオネイン生合成遺伝子群を導入することで、システインを高付加価値なエルゴチオネインに変換する発酵生産の実現及び生産コスト削減を目的とする。エルゴチオネインの発酵生産は、ジャーファーメンターで2.0 g/Lを達成目標とする。
(※)H24年~26年の農食事業採択課題:「硫黄化合物の生理機能を利用したシステイン関連物質の発酵生産」
2 研究の主要な成果
(1) エルゴチオネインの生合成系で鍵となる基質であるシステインの発酵生産について、硫黄メタボリックフローを改変し、高生産大腸菌の育種および培養法の最適化を行い、ジャーファーメンターでシステイン16 g/Lの高水準な生産に成功した。
(2) システインを基質としたエルゴチオネイン発酵生産について、エルゴチオネイン生産能力の優れたシステイン高生産大腸菌の育種および培養法の最適化を行い、ジャーファーメンターでエルゴチオネイン2.0 g/Lと極めて高水準の生産に成功した。
(3) 代謝改変育種の予測や評価に活用できる硫黄代謝産物のメタボローム解析技術を開発した。受託サービス会社を起業し(2017年)、「LC-MS注)の解析メソッドプログラム」として商品化した(2018年発売予定)。
注) LC-MS: Liquid Chromatography-Mass Spectrometry、液体クロマトグラフィー-質量分析法
公表した主な特許・論文
(1) 特願2016-02635 “L-システインの製造法” (出願人:奈良先端科学技術大学院大学、(株)味の素)
(2) Kawano, Y. et al. “Improved fermentative L-cysteine overproduction by enhancing a newly identified thiosulfate assimilation pathway in Escherichia coli” Appl. Microbiol. Biotechnol. 101(18), 6879-89 (2017).
(3) Osawa, R. et al. “Heterologous and high production of ergothioneine in Escherichia coli” J. Agric. Food Chem. (in press).
3 今後の展開方向
(1) システイン・エルゴチオネイン発酵生産の成果技術を安価な工場生産へと繋げる。また、有用特性を付与する化学修飾法を開発する。
(2)サルファーインデックス解析法を適用し、作物の生育に重要な影響を及ぼしている土壌微生物の状態を評価する数値的指標と提供法を開発する。
【今後の開発・普及目標】
(1) 2年後(2019年)は、エルゴチオネインの低コスト生産技術開発を進め、3年後(2020年)に実用化する。
(2) 5年後(2022年)は、サルファーインデックスデータを土壌(微生物)指標とする診断技術を確立する。
(3) 最終的普及により、安価なエルゴチオネイン含有商品の市場拡大や環境保全型農業(10年後に市場規模1,800億円、農家戸数17万戸に増加) )へ技術の普及が見込まれる。
4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1) 発酵生産法による安価なシステイン・エルゴチオネイン・その特性有用化誘導体の製造・販売と関連産業への波及効果を含めた売り上げにより、10億円以上の経済効果を想定している。また、サルファーインデックス受託解析では、年間5千万円(100件受注)、LC-MSメソッドパッケージの販売では年間1.5億円(150万円x 100本)が見込まれる。
(2)システインやエルゴチオネイン等の有用硫黄化合物の工業的発酵生産の実用化により、良質かつ安価で高機能性の化粧品や健康食品や医薬品等が普及し、豊かな国民生活の実現に貢献できる。
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