高度機能分化した植物組織培養による有用サポニン生産技術開発
- 課題番号
- 26001AB
- 研究グループ
- 大阪大学、神戸大学、農研機構、キリン株式会社、
理化学研究所 - 研究総括者
- 大阪大学大学院工学研究科 村中俊哉
- 研究タイプ
- 産学機関結集型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- 高度機能分化した植物組織培養による有用サポニン生産技術開発(PDF : 1461.5KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
植物サポニンは、医薬品・機能性食品素材となる有用なものが多数あるが、品質のばらつき、価格の不安定化、資源植物の枯渇化・環境破壊などの問題があり、新たな生物産業創出に向けた生物機能利用技術の開発が求められてきた。代謝スイッチング技術と、植物組織培養技術とを発展融合させ、袋型等簡易培養装置を用いて、安定的に高度機能分化した植物組織培養条件を見出すとともに、サポニンのイメージング質量分析技術を開発することを達成目標とする。
2 研究の主要な成果
(1) ジャガイモのソラニン生合成経路をスイッチングすることにより、高脂血症などの予防効果がある有用ステロイドを高蓄積(乾燥重量あたり約1%)するジャガイモ茎葉培養組織を得た。
(2) ダイズのソヤサポニンの生合成経路をスイッチングすることにより、世界で初めて、薬用植物の有用トリテルペノイドを蓄積するダイズ不定胚培養組織を得た。
(3) 袋型簡易培養装置で、ジャガイモ茎葉培養ならびに、ダイズ成熟不定胚の大量培養に成功した。
(4) 形質転換ジャガイモのマイクロチューバーで、有用ステロイドの蓄積を、イメージング質量分析で検出することに成功した。
公表した主な特許・論文
(1) Nakayasu et al. A dioxygenase catalyzes steroid 16α-hydroxylation in steroidal glycoalkaloid biosynthesis. Plant Physiology 175, 120-133 (2017)
(2) Yano et al. Metabolic switching of astringent and beneficial triterpenoid saponins in soybean is regulated by cytochrome P450 72A69. Plant J. 89, 527-539 (2017)
(3) Umemoto et al. Two cytochrome P450 monooxygenases catalyze early hydroxylation steps in the potato steroid glycoalkaloid biosynthetic pathway. Plant Physiology 171, 2458-2467 (2016)
3 今後の展開方向
(1) 有用ステロイド製造事業化に向けた遺伝子の機能解析、生産法、抽出・精製法の開発。
(2) 他のステロイド化合物への展開、トリテルペノイドサポニンの基盤研究の充実。
【今後の開発・普及目標】
(1) 2年後(2019年)は、・・・・・・有用ステロイドの低コスト大量培養生産技術を開発する。
(2) 5年後(2022年)は、・・・・・・有用サポニンを試製造する。
(3) 最終的に普及すると・・・・・有用サポニン製造のうち、組織培養物での製造シェア30%を見込む。
4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1) ジオシン相当品で、概算で国内200億円以上、世界1000億円以上の市場拡大が予想される。ダイズの代謝経路のスイッチングによりタイプの異なるサポニンの製造が期待できる。
(2) 植物起源の医薬原料等を安定かつ持続的に生産するシステムを構築することにより国民の健康向上に貢献できる。

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大阪大学大学院工学研究科
村中俊哉
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