新技術による地場採苗を活かしたマガキ養殖システムの開発
- 課題番号
- 27012B
- 研究グループ
- 水産研究・教育機構、北海道総研、三重水研、東京大学、
釧路水産普及指導所、厚岸カキ種苗センター、厚岸漁協、伊勢水産室、鳥羽磯部漁協、三重外湾漁協、ケアシェル(株) - 研究総括者
- 水産研究・教育機構瀬戸内海区水研 日向野 純也
- 研究タイプ
- 産学機関結集型 Bタイプ
- 研究期間
- 平成27年~28年(2年間)
- PDF版
- 新技術による地場採苗を活かしたマガキ養殖システムの開発(PDF : 1747.2KB)
1 研究の背景・目的・成果
マガキ養殖では広島・宮城の2大産地から購入する種苗に依存しているが、近年の採苗不調により種苗確保と価格高騰の問題に直面している。本研究では、養殖業者が実践可能な地場採苗技術及び地場種苗の特性を活かした養殖システムを開発して高品質なカキを生み出し、新たな需要喚起により収益性の高いマガキ養殖業を実現することを目的とする。本課題では、カキ殻加工固形物を付着基質としてマガキシングルシードの天然及び人工採苗に成功し、簡便で低コストな地場採苗技術を開発した。これらの地場種苗を用いて、干出操作等による飼育管理や卵巣肥大症の予防措置など、高品質なマガキ生産手法を提示した。
2 研究の内容・主要な成果
(1) 人工採苗では、養殖カゴに固形物を収容して垂下する方式で固形物のサイズを5mmにすることによって固形物1個にカキが1個付着するシングルシード比率を約90%にまで高め、殻高3mmで海域に垂下して養殖の開始が可能になった。
(2) 天然採苗では、三重県内4海域で採苗試験を行い、通水性の高い容器を用いる、また潮通しが良い場所に設置するとシングルシード比率が高くなることを見出し、良好な採苗成績が得られる条件を明らかにした。人工採苗、天然採苗とも種苗1個体あたりの生産コストを0.5円以下に抑えることができる。
(3) 地場産シングルシードで養殖試験を実施し、北海道では干出に加え網袋で被覆する方式で成熟期における身入りを低下させて成熟を抑制、干出操作により産卵放精後の早期の身入り回復を達成した。
(4) 三重県では生後4ヶ月程度のマガキでも成熟することを発見し、養殖場所や養殖方法により成熟過程が異なることを明らかにした。また、卵巣肥大症も早期に感染することが明らかになり、各海域の感染状況及びプランクトンサンプル中の原因遺伝子検出から、安全海域と危険海域の区別を可能にした。
3 開発した成果の展開方向
(1) 「カキ殻加工固形物を用いたマガキの天然採苗技術を開発」のプレスリリースを行った。
(水産機構にて公開中、http://www.fra.affrc.go.jp/pressrelease/pr2016/20161102/index.html)
(2) マガキのシングルシードを地場で天然採苗する技術は中小規模の産地でも適用可能であり、付加価値の高い生食用殻付きカキを低コストで生産する基盤技術となる。
【開発目標】
(1) 2017年は、マガキの地場採苗数を1万個体確保することを計画。
(2) 2018年は、地場種苗による養殖試験マガキを5千個体以上生産、採苗数5万個体以上を計画。
(3) 3~5年後には、5カ所以上の地域で、それぞれ地場採苗数10万個体、養殖生産数5万個体を目標。
(4) 将来的には、地場種苗をマガキ養殖種苗の1割程度まで普及させる。
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
本事業の技術は、その基幹産業であるカキ養殖生産の安定化に資するだけでなく、自ら生産したものをカキ小屋などを通じて地元で食してもらうという6次産業化・次世代型の1次産業の展開を支援する。しかも、簡単かつ低コストなだけでなく小規模から始められる技術であることから、新規就業者・若者の参入を促し、地方の漁村の活性化に貢献する。また、地域の特色を持ったカキの味比べなど観光産業と結びついて集客効果を発揮するとともに、地域水産業や環境に対する国民の関心を喚起する。
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