幻の赤海苔「カイガラアマノリ」の農水工連携による陸上増養殖技術の開発
- 課題番号
- 27029C
- 研究グループ
- (国研)水産研究・教育機構水産大学校、山口県水産研究センター、
山口大学農学部・工学部、新光産業(株)、山口県産業技術センター - 研究総括者
- (国研)水産研究・教育機構 水産大学校 村瀬 昇
- 研究タイプ
- 重要施策対応型
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- 幻の赤海苔「カイガラアマノリ」の農水工連携による陸上増養殖技術の開発(PDF : 1147.4KB)
1 研究の目的・終了時達成目標
カイガラアマノリは、東京湾、伊勢湾および瀬戸内海の一部だけに生育する希少な海藻で、山口県では「赤海苔」と称して食されてきた。これまで瀬戸内海沿岸の干潟域で本種の着生基盤による養殖が行われてきたが、冬季の重労働と不安定な生育環境により収穫量が激減した。本研究では農水工の各要素技術を連携させて、カイガラアマノリの陸上増養殖技術を開発することを目的として実施した。この技術によってカイガラアマノリを2ヶ月で500L水槽1基当たり15kg(湿重)の安定生産を達成目標とする。
2 研究の主要な成果
(1) カイガラアマノリの生育段階ごとの好適条件を明らかにし、陸上養殖水槽における環境制御システムなどの要素技術を連携させて本種の陸上養殖技術を開発し、「カイガラアマノリの陸上養殖のてびき」を作成した。
(2) 開発した陸上養殖技術による生産量は達成目標に至らなかったが、収穫までの期間を半分に短縮でき、現時点(2017年11月)では1ヶ月で500L水槽1基当たり2.8kg(2ヶ月で5.6kg)の生産が可能となった。
(3) 陸上養殖産は天然産と同様のアミノ酸組成で、健康機能性として抗アレルギー成分の含有が確認できた。
(4) 採算性を検討したところ、現時点の生産量では、水槽40基、年14回、常勤1名、パート2名などの生産規模・体制で黒字化が示された。
公表した主な特許・品種・論文
(1)中山冬麻他.紅藻カイガラアマノリおよびスサビノリ葉状体の生長に及ぼす塩分の影響.水産増殖65(4) 321-330, (2017)
(2)阿部真比古他.紅藻カイガラアマノリの糸状体の生長, 球形細胞,単列藻体および葉状体の形成及ぼす水温の影響.水産大学校研究報告66(2), 81-88 (2018)
(3)村瀬昇他.カイガラアマノリ葉状体の生長に及ぼす温度の影響.水産大学校研究報告66(4)(2018).印刷中
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
(1)陸上養殖に適した高生長・高品質な種苗を対象に高度化した養殖環境条件を構築し、実証試験により収量の増加を検証。
(2)カイガラアマノリの品質と機能性を評価して、多様な食品や健康機能性成分を含む製品開発し、国内と海外市場への普及を目指す。
【今後の開発・普及目標】
(1) 2年後(2019年度)は、カイガラアマノリの陸上養殖技術を改良し、高生長・高品質な株の育種を開始する。
(2) 5年後(2022年度)は、高度化した陸上養殖技術を構築して実証試験を行い、多様な製品開発を実施する。
(3) 最終的には、安全・安心な海苔の素材として多様な製品を開発し、国内と海外市場への普及を目指す。
4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
(1) カイガラアマノリ生産量が増加し、山口県内では約1.4億円の生産額が期待できる。また、各地域の特産、養殖および藻場構成海藻を対象とする陸上養殖生産のモデルとなり全国への波及効果が期待できる。
(2) 技術開発された陸上養殖産カイガラアマノリは、安全・安心で風味が豊かな食材であるとともに、健康機能性を備えた水産乾物として従来の板海苔と同様に和食文化を支える。
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国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産大学校
村瀬 昇
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