熱帯性食用ナマコの産卵誘発ホルモンの解明と種苗生産への応用
- 課題番号
- 26054A
- 研究グループ
- 九州大学大学院 農学研究院
- 研究総括者
- 九州大学 吉国 通庸
- 研究タイプ
- 一般型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成26年~28年(3年間)
- PDF版
- 熱帯性食用ナマコの産卵誘発ホルモンの解明と種苗生産への応用(PDF : 1154.1KB)
1 研究の背景・目的・成果
世界的な食用ナマコ貿易の急増に伴い、沖縄での熱帯性食用ナマコの乱獲が続き、天然資源の枯渇が懸念されている。主要な輸出水産物であるマナマコでは、ホルモンを用いた確実な産卵誘発技術に基づいた稚ナマコの大量生産と漁場への放流(栽培漁業)が実施されているが、マナマコのホルモンは熱帯性食用ナマコには無効で他に効果的な技術もないことから、熱帯性ナマコ類の栽培漁業は行われていない。
本研究は、熱帯性ナマコの産卵誘発ホルモンを解明し、マナマコと同様の栽培漁業を、熱帯性ナマコ類においても実現することを目的とする。 その成果は、沖縄地方における食用ナマコ資源の回復を通して、持続的なナマコ漁業の復活に繋がると期待される。
2 研究の内容・主要な成果
(1) ニセクロナマコの神経組織から産卵誘発ホルモンを発見し、同ホルモンの遺伝子をクローニングした。
(2) ニセクロナマコのホルモン遺伝子の相同遺伝子を、他のナマコ類からクローニングした(全11種)。
(3) 3種のナマコの産卵誘発ホルモンを化学合成し、実際に産卵誘発活性を持つことを確認した。
(4) 合成ホルモンが他種のナマコ類の産卵を誘発することを示し、同ホルモンがナマコ類に共通する普遍的なホルモンであることを解明した。
(5) 合成ホルモンを用いた熱帯性ナマコ類の産卵誘発技術(投与方法・投与量)を開発した。
(6) ホルモンを用いた産卵誘発法は、熱帯性ナマコ類の確実な産卵誘発を可能とする初めての技術である。
(7) このホルモンを用いることで、世界中の全ての食用ナマコ類の大量種苗生産が可能となる。
【公表した主な特許・論文】
(1) 特願 2016-211633号、放卵又は放精を誘起するペプチド (出願人:九州大学、水産研究・教育機構)
3 開発した成果の展開方向
(1) 産卵誘発技術は、受精卵を入手することから始まる魚介類の栽培漁業のための必須の技術であり、一連の成果は、沖縄県の漁業協同組合や栽培漁業センターにおいて熱帯性食用ナマコの種苗生産を実施するための実用技術となる。
(2) 沖縄県内の漁業協同組合・食品ベンチャー企業と協同して、高級食用ナマコの種苗生産・種苗放流事業を開始する。
【開発目標】
(1) 2017年は、高級種ハネジナマコの放流用種苗1万匹の生産を計画。
(2) 2018年は、高級種ハネジナマコの放流用種苗3万匹の生産を計画。
(3) 3~5年後には、高級種ハネジナマコの放流用種苗10万匹以上の生産を目標。
(4) 将来的には、沖縄県全域でのハネジナマコ放流用種苗の大量生産を目指す。
また、ハネジナマコ以外の高級食用ナマコ種の種苗生産を行う。
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
熱帯性食用ナマコ類の栽培漁業が普及することで、枯渇状態にある天然ナマコ資源が復活し、沖縄県のナマコ漁が再開できる。さらに、栽培漁業対象種を増やすことで、更なる漁業収入の向上が期待される。
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