海女漁業の再興を支援する複合魚種の高度生産システムと革新的販売方法の開発と導入
- 課題番号
- 25088C
- 研究グループ
- 三重県水産研究所、三重大学、東京海洋大学
鳥羽市水産研究所 - 研究総括者
- 三重県水産研究所 松田 浩一
- 研究タイプ
- 現場ニーズ対応型B
- 研究期間
- 平成25年~27年(3年間)
- PDF版
- 海女漁業の再興を支援する複合魚種の高度生産システムと革新的販売方法の開発と導入(PDF : 955.7KB)
1 研究の背景・目的・目標
海女漁業は、アワビ等重要水産物の生産を担うとともに、漁村の伝統行事が海女によって執り行われるなど漁村文化の維持にも重要な役割を果たしている。しかし、水産資源の減少等によって海女漁業は極めて危機的な状況にあり、活動する海女は急速に減少しつつある。当研究では、主要漁獲対象であるアワビなどの効果的な生産システムを開発するとともに、希少海藻等の生産・導入を行って漁獲対象を拡大する。さらには流通販売方法の改革による海女漁業の収益性の向上を進め、海女漁業を持続可能な漁業へと変革させることを目標とする。
2 研究の内容・主要な成果
(1) 希少な海藻として知られるカヤモノリ・ハバノリの養殖生産に必要な種苗の簡易生産方式の開発と、海女との協働による海域における生産の実証を行い、海女による生産を可能とした。カヤモノリの養殖生産は日本初。
(2) アカモクの時期別、海域別の形態差、機能成分(フコキサンチンなど)、食味の違いを明らかにし、茹で刻み商品、乾燥品、機能成分抽出用など用途別に適したアカモクの生産手法を提示した。
(3) アワビ種苗の大型化(従来の3cmから5cmへ)によって放流効果が2倍以上になることを実証するとともに、海女自らが実施可能なアワビ種苗の低コスト育成手法を開発・実証して種苗放流効果の向上の道筋をつけた。
(4) 漁場におけるアワビ密度の簡易な調査手法を提示するとともに、時として多発する蓄養中のアワビのへい死原因の把握と、そのへい死を確実に防止する技術を確立し、アワビの計画的な生産流通を可能とした。
(5) 海女によって生産された水産物の流通の実態を明らかにし、海女らによる生産品を有利に販売する有効な手法を提示した。
公表した主な特許・品種・論文
(1) 常清秀他.海女の今日的な存在形態と沿岸漁家経営における位置づけ.漁業経済研究59(2), 55-73 (2015)
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び取り組み状況
(1) 当研究で得られた成果を簡潔に取りまとめた「海女漁業支援のための新しい技術導入マニュアル」を作成した(今後、海女による団体「海女振興協議会」や漁協に配布するとともに、Webで公表予定)。
(2) 得られた成果を海女による団体を対象とした勉強会で報告するとともに、機関紙への掲載を依頼し、速やかな普及に努める。
(3) 海女によるアワビ種苗育成や、育成し生産した大型種苗の放流に関する技術指導依頼が複数寄せられており、積極的に対応して普及を進める。
(4) アカモクの生産が海女らによって実施され初め、次第に生産量が増加している。カヤモノリなどの生産に関しても、普及支援組織と連携して継続生産を働きかける。
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
(1) 全国的に漁獲量が低下しているアワビや健康増進に期待できる海藻類の生産強化を通じて水産業や流通業の収益性向上に貢献するとともに、安全で安心な水産物の安定供給を望む国民のニーズに応えることができる。
(2) 古来から漁村で重要な役割を担ってきた海女の活動を支援し、我が国の独特な文化、風習の維持に貢献する。
さらに、漁村における観光産業への経済効果が期待できる。
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