ウイルスフリー・クルマエビ家系の作出に関する技術開発およびその普及
- 課題番号
- 25069C
- 研究グループ
- 水研センター瀬戸内海区水産研究所、増養殖研究所、水産工学研究所、宮崎大学、愛媛大学、
株式会社拓水、沖縄県深層水研究所 - 研究総括者
- 瀬戸内海区水産研究所 浜野かおる
- 研究タイプ
- 現場ニーズ対応型A
- 研究期間
- 平成25年~27年(3年間)
- PDF版
- ウイルスフリー・クルマエビ家系の作出に関する技術開発およびその普及(PDF : 1136.6KB)
1 研究の背景・目的・目標
わが国においてクルマエビは古来より市場価値の高い重要漁業資源であったが、1985年を境に漁獲高が減少し、養殖の重要性が増している。1993年、輸入種苗からウイルス疾病が日本に上陸して以降、我が国沿岸の天然クルマエビにもウイルス感染が見られるようになった。通常、クルマエビ産業は天然雌エビを親にするため、種苗生産および養殖の現場からはウイルス疾病を防御するための対策が熱望されている。そのため、ウイルスフリー(SPF)の親クルマエビの選抜法および選抜個体からの種苗生産法の確立を試み、継代飼育での近交弱勢を防ぐための提案を行う。
2 研究の内容・主要な成果
(1) 世界のクルマエビ類の深刻なウイルス病原体5種類について高感度検出法を確立した。検出が非常に困難な不顕性感染個体を顕在化するためのストレス負荷法、体内ウイルスの不活化条件を明らかにした。
(2) 選抜した個体からの種苗生産を可能とする小規模水槽内での交接に成功し、成熟・産卵には環境を調整することで周年の稚エビ生産が可能となった。育種に応用可能な人工交配法を完成させた。
(3) 小規模水槽内での脱皮・交接の観察から、クルマエビの繁殖様式が明らかとなった。
(4) 遺伝的管理を行うためのDNAマーカーおよび継代シュミレーションプログラムを開発し、継代後の遺伝的多様性の推定から親の数を算出した。
公表した主な特許・品種・論文
(1) 引間順一他.養殖技術講座ーSPFクルマエビ種苗ー第1回 SPFクルマエビにおける高感度選抜法の開発.月刊養殖ビジネス 1月号 19-22 (2016)
(2) 浜野かおる他.養殖技術講座-SPFクルマエビ種苗-第2回 SPFクルマエビの高感度選抜と人工交配.月刊養殖ビジネス 2月号 20-23 (2016)
(3) 高木基裕他.養殖技術講座-SPFクルマエビ種苗-第3回 継代養殖クルマエビの遺伝的多様性評価.月刊養殖ビジネス 3月号 (2016)
(4) Biswas et. al. Loop-mediated isothermal amplification (LAMP) assays for detection and identification of aquaculture pathogens: current state and perspective. Appl. Microbiol. Biotechnol. 98(7) 2881-2895 (2014)
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び取り組み状況
(1) 事業規模でのウイルスが検出されない親からの種苗生産およびその養殖が、普及・実用化支援組織において今年から計画されている。
(2) 人工交配法の成果については種苗生産機関2箇所において今年から導入される予定。
(3) 病原ウイルスの高感度検出法、不顕性個体の顕在化法、ウイルスフリー雌雄個体からの種苗生産法、近交弱勢を防ぐための継代手法などを含めた総合マニュアルを作成中(次年度にWebで公表予定)。
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
(1) 薬剤等を使わない安全安心なクルマエビを我が国の市場に安定的に供給することができ、消費者の食の安全性に貢献できる。
(2) 本技術は、世界で年約700万トン消費されている他のクルマエビ科にも応用が可能で、クルマエビ類の輸出産業としても期待でき、国内の新産業の創出にも貢献する。世界中で抱えている深刻なエビのウイルス疾病問題に対して解決の糸口を提供でき、我が国に輸入されるエビ類の安全性も向上できる。
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水産研究・教育機構
瀬戸内海区水産研究所
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