持続的な畜産経営を可能とする生産・管理技術の実証研究
- 実証地域
- 福島県
- 分野
- 農業・農村
- 分類
- 網羅型研究
- 代表機関
- (独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所
- 参画研究機関
- (独法研究機関) (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所、(独)家畜改良センター
(公立試験研究機関) 福島県農業総合センター畜産研究所
(大学) 学校法人麻布獣医学園麻布大学、学校法人酪農学園酪農学園大学 - 研究実施期間
- 平成25年度~平成29年度
- PDF版
- 持続的な畜産経営を可能とする生産・管理技術の実証研究
研究概要
福島県の震災および原子力発電所事故の被災地では、地域によっては避難を余儀なくされるなど、酪農経営は大きな被害を受けた。
被害を受けた酪農場が経営を再開し、安定して生産を継続するためには、安全な飼料の生産と牛への給与ができるようにするとともに、避難時に減少した牛群を迅速に増殖させる必要がある。加えて、家畜ふん尿などのバイオマス資源や農場内で回収できる再生可能エネルギーを有効利用したり、家畜疾病を高度に管理して損失を回避したりすることを通して経営の改善・安定化を図る必要がある。同時に、農場全体の作業を省力化・高能率化することによって、飼養頭数増加・大規模化を可能にして所得を増大させることも重要である。
これらの目的のため、複数の先進的な技術を組み合わせて現地実証研究を行い、被災地域において安定した酪農を継続できることを示す。
研究目標
震災および原発事故により被害を受けた福島県の酪農業が営農を再開し、低コストで安定した生産を継続していくため、下記の技術を複合的に導入し、技術体系の実証を行う。
- (1) 放射性セシウム濃度を十分抑制した(25Bq/kg 水分80%換算値 以下)自給飼料の高能率生産
- (2) ふん尿の省力的堆肥化と資源循環利用、再生可能エネルギーの活用
- (3) 新たな乳房炎検査技術を取り入れた乳房炎防除管理によりバルク乳体細胞数を20万個/ml以下とするなど生乳生産上の損耗要因の低減および、ベンチマーキングによる改善目標を定めた経営改善
- (4) 雌雄判別技術を用いた効率的な繁殖と牛群能力向上、高価格な肉牛雄子牛の生産量増加
研究内容
1.安全で高品質な自給飼料生産技術の実証研究
(1)放射性セシウムの飼料作物への吸収移行抑制技術実証 (畜産草地研究所、福島県畜産研究所)
- 十分な深さで土壌を耕起し、十分に砕土する。土壌分析に基づく適正な施肥を行う。これらにより放射性セシウムの作物への移行を抑制する。
- 適切な機械を利用し高能率に作業することで、大規模化に対応する。

(2)飼料用トウモロコシ等の自給飼料栽培実証 (畜産草地研究所、福島県畜産研究所)
- 栄養価が高い飼料用トウモロコシを生産・給与することで、飼料購入費を節減する。
- 細断型ロールベーラを利用し、固定サイロ不要で高品質なサイレージを生産する。
- 不耕起播種や簡易耕播種で高能率・省エネルギー化を行う。

2.ふん尿の省力的高品質堆肥化による資源循環と再生可能エネルギー活用による経営内エネルギーマネジメントの実証研究
(1)高品質堆肥の省力生産と堆肥発酵熱の利用実証 (畜産草地研究所、福島県畜産研究所)
- 自動運転の堆肥化施設により、品質の安定した堆肥を省力的に製造する。
- 堆肥から出るアンモニアと熱を回収して利用する。

(2)生乳の熱回収利用や太陽光発電などを組み合わせた農場内エネルギーマネジメントシステムの実証 (畜産草地研究所、福島県畜産研究所)
- 搾乳された生乳の持つ熱エネルギーをヒートポンプの熱源として利用する。
- 高温洗浄水を作る燃料消費を削減する。
- 太陽光発電とエネルギーマネジメントシステムの導入で農場内電力消費配分を最適化する。
- ピーク電力をカット、電力料金を削減する。


牛舎の屋根に設置した太陽光発電パネル
3.新たな乳房炎検査システムと牛群管理ベンチマーキングの導入による生乳生産地域再生実証研究
(1)新たな乳房炎検査システムによる乳生産地域再生の実証研究(動物衛生研究所、麻布大学、酪農学園大学、福島県畜産研究所)
- 細菌DNAを標的にした乳房炎原因菌の検出・同定検査システムを取り入れた乳房炎防除管理プログラムを推進し、生乳生産上の損耗要因を低減する。
- 乳房炎による損失(乳牛1頭あたり1年間に平均4~5万円)を低減する。
DNAチップを用いた損耗疾病検出システム
衛生管理のモニター

乳房炎原因菌検出用DNAチップ(イメージ、(株)東芝)
検出可能な乳房炎原因菌

牛舎の屋根に設置した太陽光発電パネル
(2)牛群管理ベンチマーキングの実証研究(酪農学園大学、動物衛生研究所、麻布大学、福島県畜産研究所)
- ベンチマーキング(リスクの基準化)の手法を酪農経営に応用する。
- 酪農情報を2次的に利用し、農場の生産、健康、経営状況の見える化を推進する。
- 福島県内の生産状況の把握、各農場の現状評価により、牛群の生産、健康、経営を維持、向上を支援する。

4.雌雄判別技術を活用した酪農経営の早期再生実証(福島県畜産研究所、家畜改良センター)
- 雌雄判別技術を用いて、迅速な高能力牛の増頭、高価格な肉牛雄子牛の生産を推進する。

研究課題間の連携

関連情報
研究成果
- 農業・農村
- 福島県
- 持続的な畜産経営を可能とする生産・管理技術の実証研究
この研究についてのお問い合わせ先
この研究に関するご相談や質問等は、以下よりお問い合わせいただけます。
問い合わせ先:(独)農研機構 畜産草地研究所(那須研究拠点) 家畜飼養技術研究領域
担当者:上席研究員 天羽弘一
TEL:0287-37-7814
E-mail:amaha@affrc.go.jp
お問合せ先
農林水産技術会議事務局研究推進課
担当者:先端技術実証班 豊井、宮垣、上田
代表:03-3502-8111(内線5897)
ダイヤルイン:03-3502-7462
FAX番号:03-3593-2209