このページの本文へ移動

農林水産技術会議

メニュー

2026年農林水産技術こども新聞

知っておきたい!農業研究

日本の農業が大きく変わろうとしています。
少ない労力でたくさんの農作物を作る技術が次々と誕生しています。
最新技術を研究する農研機構の研究者にお話を聞きました。

水田も斜面も楽々作業―未来の"ロボ"は草取り名人―

ロボットを使って
農作業の効率化を

フラスコをモチーフにしたキャラクターのイラスト

おいしいお米や野菜を収穫するためには、草取りが欠かせません。日本は雨が多く、雑草がすぐに育つため、農業は雑草との戦いです。雑草が増えると稲や野菜が利用するはずだった肥料や光を雑草が奪うので、収量が減ります。農薬や化学肥料を使わない有機農業では、農作業時間のうち約3割が草取りです。通常、雑草は農薬をまいて枯らしたり、刈払機などで刈ったりしますが、広い面積での作業は重労働です。暑い夏の作業は特にきつく、斜面での作業は転倒などの危険も伴います。そのため、人に代わって作業をしてくれる機械の開発が進められています。今回は、水田の雑草の成長を抑える水田用自動抑草ロボット、上空から除草剤を自動散布するドローン、リモコン操作が可能な草刈機について、農研機構(※1)にお話を聞きました。

※1「国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構」の略称で、農業や食べ物について研究する国内最大の研究機関です。

水田をスーイスイ―水田用自動抑草ロボット

水田用自動抑草ロボットは、アイガモという鳥に水田での草取りを手伝ってもらう「アイガモ農法」からヒントを得ました。アイガモを水田に放すと雑草を食べ、脚で水をかき回すことで水が濁り、雑草が育つのに必要な日光を遮り育ちにくくします(抑草)。
ロボットはアイガモの脚の代わりにブラシで水をかき回して進みます。車のカーナビにも使われるGNSS(※2)で自分の位置が分かるので、動く範囲を決めておくと水田の中を自動で動いてくれます。
人による除草回数を半分くらいに減らすことができる優れものです。

※2人工衛星を利用して地上の現在位置を計測するためのシステムで、日本のみちびきやアメリカのGPSなどがある。

水田用自動抑草ロボットに関する写真と解説図。右上はモデルとなったアイガモの写真(提供:農研機構)。中央は水田の水面を進む水田用自動抑草ロボットの写真(提供:株式会社NEWGREEN)。右下は仕組みの解説図(引用元:井関農機株式会社 公式ウェブサイト「商品情報>アイガモロボ」ページ)。太陽光パネルを搭載した水田用自動抑草ロボットがブラシで水をかき回し、水をにごらせ雑草の光合成をできなくして育生を抑制する。左下は水田用自動抑草ロボット底面のブラシの写真(提供:株式会社NEWGREEN)。アイガモが脚で水をかき回すようにブラシが回転。

斜面もへっちゃら―ドローン、リモコン草刈機

日本の農地の約4割が中山間地域です。山がすぐ近くにあり平らではない場所にも雑草がたくさん生えます。農家は斜面を上り下りしながら草を刈りますが、とっても大変です。そこで、ドローンやリモコン草刈機が活躍しています。

農業では農薬や肥料の散布、種まきなどで人に代わってドローンが利用されています。散布したい場所を設定でき、操作も簡単なドローンを使うことで、作業時間は大幅に減りました。

人が農業機械に乗って作業をしている写真(提供:農研機構)と、ドローンが飛行する様子の写真(提供:(株)NTT e-Drone Technology)
ドローンなら機械に乗って操縦しなくても楽に農薬などを散布できます

リモコン草刈機は人が立つのがやっとの斜面でも、すいすい草を刈ってくれるものもあります。
斜面で人に代わって作業をしてくれるので、事故につながりにくい上、重労働から解放されます。

人が背負い式刈払機で斜面の草刈りをしている写真と、リモコン草刈機が斜面の草刈りをする様子の写真(提供:農研機構)
斜面での草刈りはとても危険です。リモコン草刈機なら斜面も苦にせず草をどんどん刈ってくれます。

期待の水稲「にじのきらめき」―暑さに強い秘密とは―

フラスコをモチーフにしたキャラクターのイラスト

今回は暑さに強い
稲の新品種のお話

暑い夏が続くようになりました。猛暑日も年々増え40度を超えることも珍しくなくなりました。暑いと稲も弱りお米の品質・収量が低下してしまいます。この暑さに対応した研究が農研機構で進んでいます。今回は高温に強いお米「にじのきらめき」と暑さを逆手に取って収量を上げる「再生二期作」について紹介します。

葉が日傘の役割 強い日差しから穂を守る

「にじのきらめき」は2018年に育成されました。日本で最も多く栽培される「コシヒカリ」は、穂が出てから20日間の平均気温が27度以上になると白く濁った米粒が増え、28度ではお米の品質が大きく低下しますが、「にじのきらめき」は28度でも品質の良いお米を収穫できます。さらに、「おいしい」「たくさん収穫できる」「病気に強く倒れにくい」など優れた特性をいくつも持ち、栽培面積が年々増えています。
「にじのきらめき」はなぜ、高温に強いのでしょうか。
注目は「葉」です。「にじのきらめき」は「コシヒカリ」に比べ葉が立っており、葉が穂を隠すように伸びています。穂への直射日光を遮り、葉から出る水分の蒸散作用で高温から穂を守っていると考えられます。蒸散作用は道路に水をまくと少しひんやりするのと同じ仕組みです。

暑さに強い仕組み

葉が真っすぐ伸びることで直射日光から穂を守ります。また、葉から出る水分の蒸散作用で穂の周囲の温度を低くすると考えられます。

にじのきらめきとコシヒカリの稲と米粒の写真(提供:農研機構)と、にじのきらめきの特徴を解説する図(引用元:農研機構)。図では、立った葉が穂を覆って陰をつくる様子と、葉からの蒸散作用によって穂の周囲の温度が低下する仕組みを示している。

稲もリユース!?同じ株から2度新米

ここまでは、暑さを回避する研究でしたが、今度は暑さを利用する「再生二期作」について紹介します。
通常、二期作は稲を収穫後、再び苗を植え収穫しますが、「再生二期作」は一度収穫した稲から再び穂を育て収穫する方法です。以前は、穂が伸びても寒さで枯れてしまいましたが、近年、秋も暑い日が続くため育つようになりました。
「にじのきらめき」で行った試験では、再生二期作の収量は一、二期作合計で10アール(1000平方メートル)当たり、約900キロと、通常の1回だけ収穫する時に比べ、約300キロ多く収穫することができました。
2回苗を植える必要がなくコストも少なくて済みます。一、二期作ともにおいしいお米が取れており注目を集めています。

再生二期作の仕組み

通常の二期作は稲を収穫後、再び苗を植えて年2回収穫しますが、再生二期作は収穫した稲株から再び葉を伸ばして育てます。稲株を通常よりも高い位置で収穫することで、稲株に多くの栄養を残し生育を後押しします。

通常の二期作と再生二期作の解説図(引用元:農研機構)と写真(提供:農研機構)。図では、両者の栽培から収穫までの流れを比較している。写真では、通常の二期作の収穫後の稲株(写真1)と、再生二期作の収穫1日後(写真2)、28日後(写真3)、50日後(写真4)の再生の様子が示されている。
通常の稲の収穫(写真1)に比べて再生二期作は高い位置で収穫するため葉も青々しています(写真2)。
栄養もたっぷり残っているので、ぐんぐん成長し再び穂をつけます(写真4)

害虫防除の研究最前線

害虫防除に新発想

フラスコをモチーフにしたキャラクターのイラスト

今回は害虫から農作物を守る(害虫防除)最前線の研究を探ってみます。1つは害虫「モニタリング装置」です。害虫の発生状況を自動で知ることができ、最適なタイミングで農薬を使用できます。もう1つは害虫にレーザーを当てて防除する画期的な技術です。現在、2つの研究は農作物の代表的な害虫、ハスモンヨトウで研究が進んでいます。

害虫の発生状況を自動で撮影・送信

害虫から農作物を守るため、生産者は農薬を使用し防除します。そのためにはまず、発生状況を知ることが大切です。現在は調査員が各地の農地に出向き確認していますが手間がかかり集計にも1週間ほどかかるため、その間に害虫が移動・増加してしまい適切な時期に農薬を使用できないなどの課題がありました。
そこで害虫の発生状況の調査を自動化するために開発されたのが「モニタリング装置」です。フェロモン剤で害虫をおびき寄せ、その数を自動で撮影した画像からすばやく知ることができるため、農薬の使用に適したタイミングが分かり、防除の効果が高まります。
モニタリング装置を設置することで調査地点も増やすことができ、発生状況調査の精度も高まります。調査データを分析し気象データなどを組み合わせることで害虫の発生予測にもつながると期待されています。

害虫モニタリング装置の写真(提供:農研機構)と解説図(引用元:農研機構)。装置の全高は130から150センチメートル。最上部の誘引部では、昆虫を引き寄せる効果がある化学物質(フェロモン剤)でおびき寄せる。続く移動部では、おびき寄せた害虫を殺虫し、下の箱に移す。撮影部ですべての害虫を撮影し、インターネットで送信。専門家が分析する。その後、害虫を下の箱から出し廃棄となる。図1 害虫モニタリング装置の仕組み

飛行を予測してレーザーで防除

害虫防除で、同じ農薬を使い続けると害虫に農薬に耐える力がつき、効果が低くなることがあります。農薬開発には多くのお金と時間がかかるため農薬以外の害虫防除の研究が進んでいます。
その1つが半導体レーザーを使って防除する技術です。まだ開発段階ですが、飛び回るハスモンヨトウにレーザーを照射して防除できる装置を作っています。
飛ぶ様子をカメラで撮影しAIで解析。飛行経路を予測してレーザーを照射します。人や作物を傷つけないための安全対策のほか、移動ロボットに乗せて自動巡回しながら防除を行うことなどを考えていて、未来の農業を大きく変える可能性を秘めています。

レーザー照射の技術の解説(引用元:農研機構)と照射時のCGイメージ(提供:農研機構)。技術1はステレオカメラ。害虫の動きを正確に知る。2台のカメラで目標を連続撮影し、2つの画像から飛んでいる害虫の立体的(縦・横・奥行き方向)な動きをとらえる。技術2は移動予測。害虫が移動する一を予測する。害虫の動きをAI解析することで、撮影してからレーザー照射するまでのわずかな時間に害虫が移動する位置を予測。技術3は半導体レーザー。レーザーで害虫を狙撃する。予測した位置に向けて協力なレーザーを照射する。図2 レーザー照射の仕組み

メモ:ハスモンヨトウ

ハスモンヨトウの成虫の写真成虫
提供:農研機構

蛾の一種。幼虫が大豆、キャベツ、トマトなど多くの野菜、豆類、果樹などを食害します。幼虫の食害を防ぐため、成虫も防除の対象となります。

そらひびき・みずき・たかく・みのり―国産大豆に収量アップの新風―

今回は私が解説するね

フラスコをモチーフにしたキャラクターのイラスト

大豆は、日本の食卓に欠かせない食材や調味料に加工され、昔から使われてきました。現在、日本では約359万トンの大豆が利用されています。そのうち、約7割はサラダ油などを作るための「油糧用」に、約3割は豆腐、納豆、みそ、しょうゆ、煮豆などの「食品用」に使われています(図1)。

大豆需要量の内訳を示す円グラフ(出典:食料需給表)。油糧用は239万9千トン(67%)、食品用は104万5千トン(29%)、その他(飼料、種子等)は14万5千トン(4%)。食品用のうち、国産は24万1千トン(23%)、輸入は80万4千トン(77%)となっている。図1 日本の大豆需要量(2024年)

国産大豆は、味が良いなど品質の高さが評価されており、ほぼ全量が豆腐や納豆、煮豆などの食品用に使われています。しかし、食品用の大豆の中でも、国産の割合は約2割しかありません。そのため、食品メーカーからは、品質の良い国産大豆をもっと生産してほしいという声があがっています。

収量アップを目指し「そらシリーズ」を開発

国産大豆の生産量※を増やすためには、作付面積を増やすだけでなく、その面積あたりの収穫量(収量)を増やすことが必要です。これまでの日本の大豆品種は、外国の品種に比べて味や品質がすぐれている一方で、収量が低いという課題がありました(図2)。

大豆の収量の国際比較をした折れ線グラフと10アール当たりの収量のデータ(資料:国連食糧農業機関FAOSTAT)。2000年から2020年にかけて、アメリカとブラジルの収量は増加傾向にあるが、日本の収量は、ほぼ横ばいで推移していることがわかる。また、2019年から2023年の10アール当たりの収量は、世界平均275キログラム、アメリカ337キログラム、ブラジル326キログラム、カナダ300キログラム、アルゼンチン271キログラム、中国196キログラム、日本161キログラムとなっている。国産を増やすことが大事。図2 大豆の収量の国際比較

そこでこの問題を解決するために、農研機構では、品質のよい日本の品種と、収量の高い外国の品種を交配し、新しい大豆の品種を開発する研究を進めてきました。その結果、10年以上の研究を経て、品質がよく、収量も高い大豆の新品種が生まれました。それが「そらシリーズ」です。それぞれの品種名は「そら」の2文字で揃え農研機構の研究員の皆さんが願いを込めて名付けました。地域の気候に合わせて「そらひびき」「そらみずき」「そらたかく」「そらみのり」の4品種があります。

「そらシリーズ」の栽培適地を色別に示した図。4品種で東北から九州までをカバーしている。「そらひびき」は東北南部から北陸地域。名前の由来は、倒れずに「空」に向かって育った茎に多くのさやが実り、カラカラと揺れる音が「響き」わたる姿をイメージ。里のほほえみと比較して収量21%アップ。「そらみずき」は関東から近畿地域。名前の由来は、大豆の成長を育む「空」と「水」に感謝し、収穫を「喜ぶ」姿をイメージ。里のほほえみと比較して収量67%アップ。「そらたかく」は東海から九州北部地域。名前の由来は、「空」に向かって真っすぐ「高く」伸びる姿をイメージ。フクユタカと比較して収量54%アップ。「そらみのり」は東海から九州地域。名前の由来は、「空」に感謝し多くの大豆が「実る」様子をイメージ。フクユタカと比較して収量38%アップ。

これまでの品種よりも収量は約2~7割も多く取れます。また、さやがはじけにくいため、収穫前に豆が畑に落ちてしまうことが少なくなりました。落ちた大豆は機械での収穫が難しかったので、収量アップにつながります。大豆の病気の1つ葉焼病にも強く、生産者からも「作りやすい」と好評です。大豆が最も使われる豆腐の原料としても評価されています。
これらの新しい品種の普及が進むことで、国産大豆の生産量増加が期待されます。

※「生産量」は一定期間(一般に1年間)に生産された農作物の数量を示す指標。

お問合せ先

農林水産技術会議事務局研究企画課

ダイヤルイン:03-3502-7407