第217回農林交流センターワークショップ
栽培環境における気温の観測技法と利用
趣旨
近年、農業の現場では夏期の異常高温などにより生じる農作物の生育障害への対応を迫られており、気温を精度よく把握することの必要性が増しています。しかし、不適切な方法で観測・収集された気温データを説明変数として栽培データの解析を行えば、得られる結果の汎用性が失われたり、誤った解釈を導いたりしかねません。また、気温を始めとする栽培環境のデータを積極的に活用するスマート農業において、高度な生産管理やデータ連携・共有を進めるためには、相互に比較可能な確度の高いデータを得る必要があります。そこで本ワークショップは、気象を専門としない農業関連の研究者や技術者の方を対象として、作物が栽培される環境において気温を精度よく観測して利用するために必要な一連の知識と技法を基礎から総合的に習得できる機会を提供します。
圃場や温室のように強い日射にさらされる環境において気温を精度よく観測するには、日射熱がセンサーに及ぼす影響を遮るために強制通風式の放射除けの使用が必須です。そこで、参加者は旧農環研*が開発した安価で自作可能な強制通風筒「NIAES-09S(改)」をそれぞれ製作します。続いて、それらを圃場やパイプハウス内に設置して気温と湿度の観測を行い、観測条件の違いによって得られる値にどのような変化が生じるのかを確認しながら、より正確な観測値を得るための観測技法を実地に習得します。なお、本ワークショップで製作した強制通風筒は温湿度データロガーを含めて持ち帰れますので、現場ですぐに役立てていただく事ができます。
また、気温観測の理論、気象データのまとめ方、植物体温と気温との違い、面的な気象分布を推定したメッシュ気象値の概要と注意点、農耕地で観測される気温とAMeDASのそれとの違いなどを、それぞれ講義や実習を通じて習得していただきます。
*:旧国立研究開発法人農業環境技術研究所は法人統合により平成28年4月1日から国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構となりました。
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講義と実習内容
2019年6月5日(水曜日)
08時45分-08時50分 | 【挨拶】農林水産省農林水産技術会議事務局 筑波産学連携支援センター コーディネーション推進課長 荒川 智幸 |
08時50分-09時20分 | 【講義】「NIAES-09S(改)型強制通風筒の紹介」 福岡 峰彦(農研機構 農業環境変動研究センター) |
09時20分-15時20分 | 【屋内実習】「NIAES-09S(改)型強制通風筒の製作」 福岡 峰彦 |
15時30分-17時00分 | 【屋外実習】「測器の設置」福岡 峰彦、吉本 真由美(農研機構 農業環境変動研究センター) |
2019年6月6日(木曜日)
08時30分-09時50分 | 【講義】「気温・湿度観測の理論と注意点」 桑形 恒男(農研機構 農業環境変動研究センター) |
09時55分-11時15分 | 【講義】「作物栽培環境における気温・湿度の観測技法」 福岡 峰彦 |
11時20分-12時00分 | 【講義】「植物の体温はどのようにして決まるのか」 吉本 真由美 |
13時00分-13時50分 | 【講義】「メッシュ気象値の概要と注意点」 石郷岡 康史(農研機構 農業環境変動研究センター ) |
13時55分-14時25分 | 【講義】「農耕地の気温はAMeDASの気温とどう違うのか」 桑形 恒男 |
14時30分-14時45分 | 【講義】「活用事例の紹介(1)」 牛尾 亜由子(農研機構 野菜花き研究部門) |
14時45分-15時00分 | 【講義】「活用事例の紹介(2)」 山下 善道(農研機構 東北農業研究センター) |
15時00分-16時00分 | 【ライトニングトーク】「受講者が取り組んでいる課題の紹介」 福岡 峰彦、発表:各受講者 |
16時10分-16時30分 | 【屋外実習】「総合気象観測装置の見学(農環研気象観測露場)」 桑形 恒男 |
16時30分-17時00分 | 【屋外実習】「測器の撤収」 福岡 峰彦、吉本 真由美 |
2019年6月7日(金曜日)
08時30分-09時30分 | 【講義・屋内実習】「気象観測データのまとめ方」 石郷岡 康史 |
09時35分-15時00分 | 【屋内実習】「観測データの解析」 福岡 峰彦、メンター(桑形 恒男、吉本 真由美、石郷岡 康史) |
15時10分-16時10分 | 【発表】「解析結果の発表と考察」 福岡 峰彦、発表:各班、講評:各メンター |
16時10分-16時30分 | 【質疑】「質疑討論」 桑形 恒男、吉本 真由美、石郷岡 康史、福岡 峰彦 |
お問合せ先
農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター
コーディネーション推進課
電話:029-838-7136 メール:
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