配信例(「食と農の研究メールマガジン」 第447号(2025年11月1日号))
目次
- サツマイモ基腐病に強く収量・外観・食味に優れる沖縄向け青果用紅いも新品種「Hai-Saiすいーと」
- 基腐病に強い赤紫肉色のサツマイモ新品種「さくらほのか」
- 稲の刈り株からも糖回収!
- 世界各地から収集したイネ遺伝資源「NARO Open Rice Collection (NRC)」の整備とゲノム情報の公開
- 大量合成可能なジャガイモシロシストセンチュウ ふ化促進物質を発見
- ミトコンドリアゲノム編集法によりナスの細胞質雄性不稔の原因遺伝子の機能証明に成功
- 収穫したレンコンに傷が... カモの食害?
- 稲わらを石灰処理後に高密度化するCaPPAプロセス
- ノコギリカメムシの“耳”と思われていたのは“共生器官”だった
- 根室市役所旧庁舎のカラマツ・グイマツの里帰り
- 旧校舎シンボル「当別小学校のあかまつ」の後継樹の里帰り
3)令和6年能登半島地震における農業被害の復旧・復興からの参考技術情報
1)トピックス
- (研究成果)サツマイモ基腐病に強く収量・外観・食味に優れる沖縄向け青果用紅いも新品種「Hai-Saiすいーと」
- 沖縄県産ブランド紅いもの確立に向けて -
農研機構は沖縄向け青果用紅いも新品種「Hai-Sai(はいさい)すいーと」(系統名:糸系4)を育成しました。サツマイモ基腐病に強く、沖縄県で青果用として利用されている「沖夢紫(おきゆめむらさき)」や「備瀬(びせ)」よりも多収で外観が良く、肉色は「沖夢紫」と同等の濃い紫色を呈し、蒸しいもの食味が良いのが特徴です。沖縄県産紅いもの青果用市場の拡大に貢献することが期待されます。
[農研機構]
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/karc/172298.html
- (研究成果)基腐病に強い赤紫肉色のサツマイモ新品種「さくらほのか」
- 多収・鮮やかな色調で、加工用途の拡大に期待 -
農研機構は、赤紫色の肉色を持つサツマイモの新品種「さくらほのか」を育成しました。「さくらほのか」は、既存の紫サツマイモとは異なり、赤みを帯びた暖色系の鮮やかな赤紫色が特徴です。いも収量が高く、サツマイモ基腐病に対する抵抗性にも優れています。揚げ菓子などの加工用途に利用することで、色鮮やかなサツマイモ菓子の開発が可能となり、加工品の多様化が期待されます。
[農研機構]
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/karc/172297.html
- (研究成果) 稲の刈り株からも糖回収!
- ほ場に埋もれる糖質資源のアップサイクルへ -
稲の刈り株は地中に埋もれて回収が困難なため、稲わらや籾殻と比べてエタノール発酵基質となる糖の量や質に関する研究は進んでいません。農研機構は、高バイオマス水稲品種「北陸193号」の刈り株に、稲わら画分の約6割に相当する糖が含まれることを明らかにしました。特に、刈り株の重量の8割以上を占める地際部・分げつ基部では、前処理と酵素糖化処理によって、稲わら画分と同程度の効率で糖を回収できることが分かりました。今後、企業等と連携を図り、「埋もれていた糖質資源」である刈り株の新たな利用価値を掘り起こします。
[農研機構]
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nfri/172138.html
- (研究成果) 世界各地から収集したイネ遺伝資源「NARO Open Rice Collection (NRC)」の整備とゲノム情報の公開
- 多様な栽培環境に対応した品種の育成への活用 -
農研機構では、同遺伝資源研究センターが農業生物資源ジーンバンク事業で保有する約2万4千系統のイネの中から、さまざまな特徴を代表して持つ系統として623系統を選抜し、これらの高精度ゲノム情報の取得と解析を行いました。選ばれた遺伝資源のゲノム情報を活用することで、ストレス耐性などに関わる未利用有用遺伝子の情報取得が容易になり、激甚化する環境変動に対応した品種の育成に有用な系統を迅速に選ぶことが可能になります。
[農研機構]
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nics/172129.html
- (研究成果)大量合成可能なジャガイモシロシストセンチュウ ふ化促進物質を発見
- "騙して"ふ化させ、餓死に導く新たな防除法へ -
農研機構、日本曹達株式会社、北海道大学の研究グループは、ばれいしょの世界的な害虫であるジャガイモシロシストセンチュウ(Globodera pallida)に対する、化学構造が単純で大量合成が可能なふ化促進物質を新たに発見しました。ほ場試験では、この物質の処理により土壌中のジャガイモシロシストセンチュウ密度を大幅に低減させることに成功しました。本成果は、全く新しい作用機作の防除技術の実現に向けた一歩となるものであり、持続可能なばれいしょ生産への大きな貢献が期待されます。
[農研機構][日本曹達株式会社][北海道大学]
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/harc/170598.html
- ミトコンドリアゲノム編集法によりナスの細胞質雄性不稔の原因遺伝子の機能証明に成功
mitoTALEN法及びmitoTALECD法を用い、ナスのミトコンドリア遺伝子のゲノム編集に世界で初めて成功した。 ターゲットにした細胞質雄性不稔(CMS)遺伝子orf218のDNA配列を改変することで、このミトコンドリア遺伝子のノックアウト系統を作出できた。 orf218のノックアウト系統では雄性不稔性が消失し、形成された花粉により自殖後代を得ることができた。 ナスのCMSの原因遺伝子は、ミトコンドリアのorf218であることが証明された。
[龍谷大学][京都産業大学][農研機構][東京大学]
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-17263.html
- (お知らせ) 収穫したレンコンに傷が... カモの食害?
- 食痕から「カモ被害」を識別する標準作業手順書を公開 -
農研機構は、「れんこんへの『カモ被害』把握のための食痕識別標準作業手順書」をウェブサイトで公開しました。 収穫したレンコンにえぐられた傷があった場合に、鳥(マガモ、カルガモ、オオバン)による食害であるか識別する手順を解説しています。 様々な形の食痕(レンコンに付いた傷)の実例写真を収録しました。本手順書と照らし合わせることで、加害種を推定し、鳥によるレンコン食害の正確な把握につなげることができます。
[農研機構]
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nilgs/172044.html
- (研究成果) 稲わらを石灰処理後に高密度化するCaPPAプロセス
- 輸送・貯蔵性に加えてエタノール原料価値も向上! -
国産バイオエタノールの原料候補である稲わらは、かさばるため、輸送や貯蔵が困難という欠点があります。そこで、農研機構と足立石灰工業(株)は、石灰処理後に稲わらを圧縮し体積を抑える「CaPPAプロセス」を開発しました。本プロセスによる高密度な加工物は、輸送・貯蔵性に加えて糖化特性も向上しており、地域のバイオエタノール製造原料として、より供給しやすく、備蓄しやすく、使いやすくなります。今後、原料加工拠点候補の石灰製造企業やバイオ企業等との連携を図ることで、本プロセスの産業技術化を加速します。
[農研機構][足立石灰工業株式会社]
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nfri/172013.html
- ノコギリカメムシの“耳”と思われていたのは“共生器官”だった
後脚で培養した菌で寄生蜂から卵を守る防衛共生の発見
メス成虫の後脚に昆虫の耳にあたる鼓膜器官があるといわれていたノコギリカメムシにおいて、その構造は実は聴覚器官ではなく、特定の糸状菌を選択的に培養する共生器官であることを発見しました。さらに、その器官で培養された菌が、ノコギリカメムシの産卵時に寄生蜂から卵を守る役割を持つことを突き止めました。
[産業技術総合研究所] [筑波大学] [森林研究・整備機構] [科学技術振興機構(JST)]
https://www.ffpri.go.jp/press/2025/20251017/index.html
- 根室市役所旧庁舎のカラマツ・グイマツの里帰り
-林木遺伝子銀行110番による巨樹・名木等のクローン増殖の取組-
根室市役所新庁舎建設に伴い伐採、移植したカラマツ・グイマツの後継樹の苗木が、森林研究・整備機構森林総合研究所林木育種センター北海道育種場から里帰りします。
[森林研究・整備機構]
https://www.ffpri.go.jp/hokuiku/documents/nemuro1113.pdf
- 旧校舎シンボル「当別小学校のあかまつ」の後継樹の里帰り
-林木遺伝子銀行110番による巨樹・名木等のクローン増殖の取組-
令和4年3月31日で閉校した当別小学校敷地に植栽されている「当別小学校のあかまつ」の後継樹の苗木が、森林研究・整備機構森林総合研究所林木育種センター北海道育種場から里帰りします。
[森林研究・整備機構]
https://www.ffpri.go.jp/hokuiku/documents/tobetsu1031.pdf
2)イベント等
- 2025年11月8日(土曜日) 9時00分から12時00分まで
東北農業研究センター大仙研究拠点一般公開2025
東北の水稲・大豆研究をテーマに、公開講座や研究紹介・展示、試食があります
場所:農研機構東北農業研究センター大仙研究拠点 (秋田県大仙市)
入場:無料
[農研機構]
https://www.naro.go.jp/event/list/2025/10/170452.html
- 2025年11月27日(木曜日)13時00分から16時45分まで
シンポジウム「炭素貯留能力に優れたヒノキ・カラマツ・コウヨウザンの育種に向けて ーゲノム基盤の整備と育種技術の高度化ー」
場所:オンライン形式(Microsoft Teams)
費用:無料
申込方法:事前登録制2025年11月20日(木曜日)まで
[森林研究・整備機構]
https://www.ffpri.go.jp/ftbc/research/news/2025/gipro_sympo3.html
- 2025年11月17日(月曜日)13時30分から16時15分まで
公開講演会 宮崎大学農学部連携協定締結記念 令和7年度九州地域公開講演会を開催
2017年に九州森林管理局が熊本県人吉市の国有林に10haの試験団地を設定し、宮崎大学・森林総合研究所と連携して多くの造林技術の検証と開発が行われました。その中で特徴のある成果を分かりやすく紹介します。
会場:くまもと県民交流館パレア10階パレアホール(熊本市中央区手取本町8-9)
費用:入場無料
申込方法:事前予約不要
[森林研究・整備機構]
https://www.ffpri.go.jp/kys/research/happyo/index.html
- 2025年11月8日(土曜日)午前10時00分から12時00分まで
- 2025年11月8日(土曜日)午後 1時30分から3時30分まで
- 2025年12月7日(日曜日)午前10時00分から12時00分まで
- 2025年12月7日(日曜日)午後 1時30分から3時30分まで
特別観察会「くさぶえ体験(初級編)」を開催します
場所:森林総合研究所 多摩森林科学園森の科学館と周辺(東京都八王子市廿里町1833-81)
定員:午前、午後とも5名
費用:参加費は無料、通常の入園料は必要
申込方法:kouhotama_box@ffpri.go.jpまでお申し込みください
[森林研究・整備機構]
https://www.ffpri.go.jp/tmk/kengakuannai/event/tokubetsu/kusabue2025.html
- 2025年12月19日(金曜日)13時15分から15時00分まで
森林講座 固有種の宝庫、小笠原諸島の林木遺伝資源保全に向けた取組
絶滅危惧種オガサワラグワのクローン保存の取組と、自生地で採取した固有種の種子を冷凍で長期保存するために必要な特性評価の取組について紹介します。
場所:森林総合研究所 多摩森林科学園森の科学館(東京都八王子市廿里町1833-81)
定員:先着順30名
費用:無料(ただし、森林講座が行われる森の科学館以外を見学される場合は、入園料が必要です。)
申込方法:往復はがき、または電子メールshinrinkouza@ffpri.go.jpで、11月1日から受付開始
[森林研究・整備機構]
https://www.ffpri.go.jp/tmk/kengakuannai/event/shinrinkouza/2025kouza.html
3)令和6年能登半島地震における農業被害の 復旧・復興からの参考技術情報
- 令和6年能登半島地震における農業被害の 復旧・復興からの参考技術情報(農研機構)
https://www.naro.go.jp/disaster/ishikawa202401/index.html
4)刊行物等
- 森林総合研究所研究報告 第24巻3号(通巻475号)2025.9
[森林研究・整備機構]
https://www.ffpri.go.jp/pubs/bulletin/475/index.html
【ご案内】
メールマガジンの配信変更・解除は以下からお手続できます
https://www.maff.go.jp/j/pr/e-mag/
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https://www.maff.go.jp/j/apply/index.html
農林水産分野の研究機関へのリンク
https://www.affrc.maff.go.jp/koho/kikan.htm
【編集発行】
〒100-8950東京都千代田区霞が関1-2-1
農林水産省 農林水産技術会議事務局 研究企画課
TEL:03-3502-7407
お問合せ先
農林水産技術会議事務局研究企画課
担当者:戦略的実装班
代表:03-3502-8111(内線5847)
ダイヤルイン:03-3502-7406




