安全・安い ヒト型コラーゲン生成
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カイコは「ガ」の仲間で、中国でクワコという野生のガを家畜化したのが始まりと言われています。カイコは幼虫から蛹になる時に糸を吐き出して繭を作ります。この繭の糸を紡いで絹糸を作り、絹糸を織った布から、しなやかな手触りで光沢のある衣服を仕立てることができます。 絹製品はその性質や生産量から非常に貴重な繊維であり、中国からシルクロードを通ってヨーロッパと交易されたり、税金の代わりに納められたりしてきました。その絹糸の生産量や品質の向上のために、人間はカイコの品種改良を重ねてきました。今では、カイコは自分で餌を探して動き回る能力を無くしてしまい、人間の世話無しには生き延びることすらできません。 今回は、このカイコが作る糸の中に化粧品の原料を作らせるというお話です。 コラーゲンの安全性おうちの人が使っている化粧品のラベルに、「コラーゲン」と書かれたものはありませんか。コラーゲンは動物の皮膚や骨に多く含まれているタンパク質で、皮膚や骨の弾力性を保つとともに保湿効果を高める役割を担っています。その優れた保湿能力を生かして、乾燥から肌を保護する目的で、多くの化粧品にコラーゲンが配合されています。 これまではウシやブタ、サカナ由来のコラーゲンが使われていましたが、これらのコラーゲンを構成するアミノ酸の並び方がヒト由来のコラーゲンと大きく異なっているため、アレルギー症状を引き起こす可能性が懸念されていました。 ヒト型コラーゲンを作るカイコカイコの作る糸はタンパク質でできています。コラーゲンもタンパク質なので、カイコの遺伝子を組み換えることにより、ヒト型コラーゲンを含む糸を吐き出させることができるようになりました。ヒト型コラーゲンは糸の中にたくさん含まれていて、簡単に取り出すことができます。 カイコはもともと大量に飼育することが容易なため、この遺伝子組み換えカイコを何万頭も飼育することで、低価格で安全なヒト型コラーゲンを配合した化粧品を作ることができるようになりました。 このような遺伝子組み換えカイコの作出技術は今、ヒト型コラーゲンの他に、医薬品などの有用物質生産にも活用されようとしています。昆虫であるカイコにヒト型のコラーゲンや医薬品を作ってもらう、まるで昆虫工場ですね。
((株)免疫生物研究所 提供)
(絵:筒井 博子) 全国農業新聞[外部リンク] 2015年6月26日に掲載されたものを再編集 |
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