若手農林水産研究者表彰
令和元年度(第15回)業績概要

受賞者 南光 一樹 氏 39歳
国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所 主任研究員
略歴
平成19年博士取得(農学・東京大学)。筑波大学、サウスカロライナ大学、JSPS、森林総研でのポスドクを経て、平成25年より現所属。
業績概要
背景
森林に降った雨は「樹冠」「下草・落葉」を順に通過して地面に到達する。下草・落葉があれば土壌は侵食されない。しかし下草・落葉が消失し、雨滴が直接地面に衝突し、土壌侵食が深刻化する森林が国内外で増えている。表土保持機能を維持する適切な森林管理技術の開発のために、森林での土壌侵食メカニズムの解明が必要である。
研究内容・成果
林内雨滴を測定するレーザー雨滴計を開発した
→これは、雨滴通過時のレーザービームの遮断状況から、雨滴の大きさと速さを測定する。6ヶ国の多様な地域に設置し、世界最多の林内雨滴データを集積した。
林内雨滴の生成プロセスを明らかにした
→林内雨 = 直達雨 + 飛沫雨(小粒) + 滴下雨(大粒)
→大粒の滴下雨によって、林内の雨滴衝撃エネルギーが林外よりも大きくなる。
→直達雨・飛沫雨・滴下雨それぞれの雨量と雨滴の大きさが、樹種・樹冠構造・気象要素によって異なることを明らかにした。
ヒノキ林の雨滴衝撃エネルギーの予測式を構築した
→ヒノキは手入れ不足で過密化すると土壌侵食が深刻化しやすい。
→樹高と枝下高から予測可能である。
林内の土壌侵食の実態を明らかにした
→下草・落葉が多いほど土壌は侵食されにくい。
→従来のモデルでは森林に特有な滴下雨と急な斜面を考慮していないため、林内の土壌侵食量を過小評価した。
→樹木成長に伴う下草・落葉と雨滴衝撃エネルギーの変化により、ヒノキ人工林では樹齢20年程度のときに土壌侵食の危険性が最も高い。

独自開発したレーザー雨滴計を用いて、森林内の雨滴の生成過程や衝撃エネルギーと土壌侵食との因果関係を解明し、今後の人為的あるいは自然由来の森林内植生変化による水と土砂の動態予測を可能とした点を高く評価した。
連絡先
森林総合研究所 森林防災研究領域
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お問合せ先
農林水産技術会議事務局研究調整課
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