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農林水産技術会議

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若手農林水産研究者表彰

平成17年度(第1回)業績概要

新しい網羅的タンパク質解析手法の開発とアレルゲン検出技術への応用に関する研究

受賞者:矢野 裕之氏 39歳

(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 作物研究所 主任研究官

略歴

平成5年東京理科大学薬学研究科博士卒、(株)資生堂研究開発本部を経て、平成9年農水省入省。薬学博士

業績概要

主な業績

タンパク質の架橋結合(ジスルフィド結合)の形成・切断は、タンパク質・酵素の特性を大きく変化させることから、生物において重要な役割を果たしていることが明らかになってきている。
本研究では、架橋結合に関わっているアミノ酸残基を特異的に蛍光修飾し、二次元電気泳動と組み合わせることにより、架橋結合に変化を生じたタンパク質を網羅的に解析する手法を開発した。本法では、細胞中の数多くのタンパク質のうち架橋結合の変化を生じたものだけを迅速に識別することができることから、細胞の生理調節機構の解明に有用である。
また、タンパク質の構造を強固に保つ架橋結合がタンパク質の分解抵抗性に関わり、ひいてはアレルゲン性に関係しているとの前提に立って、本法をアレルゲン物質の検出に応用したところ、ハウスダスト、花粉、穀物について既知アレルゲンタンパク質に加え、新規アレルゲン候補タンパク質を見出す等、本法の有用性を実証した。
当該業績は数多くの国際誌に引用されるとともに、内外の産官学の研究機関で応用されつつある。例えば、植物では種子の登熟・発芽生理や光合成、酸化ストレス耐性、耐病性等に関連する新しい架橋結合制御機構が解明されている。出願中の特許「アレルゲンの検出方法」は複数の企業で利用されている。
本成果は、将来的には架橋結合制御を応用した新規有用作物、医薬品、低アレルゲン化技術の開発に寄与し、新産業創出への貢献が期待される。

研究内容・成果

主要論文・特許

「A strategy for the identification of proteins targeted by thioredoxin」,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98, 4794-4799 (2001)

「Identification of disulfide proteins in the salt soluble fraction of rice(Oryza sativa) seed」, Cereal Chem., 80, 172-174 (2003)

受賞評価のポイント

本研究業績は、タンパク質の架橋結合(ジスルフィド結合)の網羅的かつ迅速な解析手法を新たに開発するとともに、本手法を新たなアレルゲン検出技術の開発等に応用し、その有効性を実証した点で評価できる。また、本成果は、低アレルゲン作物・食品の開発を目指した共同研究に発展するなど、農業・食品産業での活用が期待される。

連絡先

(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 作物研究所

〒305-8518 茨城県つくば市観音台2-1-18

TEL: 029-838-8951

お問合せ先

農林水産技術会議事務局研究調整課

代表:03-3502-8111(内線5810)
ダイヤルイン:03-3502-7399
FAX番号:03-5511-8622