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農林水産技術会議

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若手農林水産研究者表彰

平成21年度(第5回)業績概要

水産生物資源データの統計モデル解析手法の開発と応用に関する研究

受賞者:岡村 寛 氏 38歳

独立行政法人水産総合研究センター 遠洋水産研究所 主任研究員

略歴

平成7年東北大学大学院理学研究科修了。同年水産庁遠洋水産研究所(現、(独) 水産総合研究センター遠洋水産研究所)に入所。平成18年より現職。農学博士。

業績概要

主な業績

魚類の年齢は資源管理の基礎となる情報であり、一般に輪紋が周期的に刻まれる硬組織を用いて、輪紋数のカウントによって推定される。その際、輪紋周期性(輪紋が年に何本できるか)の検証が年齢査定の信頼性を大きく左右することになる。
輪紋周期性は 通常 大量に漁獲した魚の年齢形質サンプルから硬組織最外縁の輪紋状況と標本採集時期のデータを用いて観測されるが、客観的・定量的に輪紋周期性を推定する手法は存在しなかった。輪紋周期性の判定を誤った場合、年齢査定結果に大きな誤差をもたらすことになり、資源管理の失敗に繋がる恐れがある。
そこで、本研究では、通常の二項応答変数モデル(応答変数が0か1であるもの)と循環統計分布を組み合わせて輪紋周期の推定を行うという新しい発想に基づいて、輪紋周期性を客観的に判定する手法を考案した。最も妥当な輪紋周期性は、この新たな統計手法を使用することにより、赤池情報量規準(AIC、統計モデルの良さを評価する指標)という客観的判定規準に従って決定される。さらに、本手法の有効性を検証するため、実際の輪紋生成プロセスを模倣したシミュレーションプログラムを作成し、そのプログラムから得られる擬似データに本手法を適用することにより、通常得られる程度の標本サイズ(月20個体程度のデータ)があれば、正確に輪紋周期性を推定できることを示した。一例として、輪紋周期性が未確定だった北太平洋のアオザメの輪紋カウントデータに本手法を適用した結果、1年に1本の輪紋が形成されることが統計的に確認された。
本手法は、今後の水産生物資源の持続的利用のために大いに活用されることを目的に、ホームページを通して普及に努めている。

背景

資源管理失敗のリスクを大幅に減少させるためには、 水産生物資源の年齢査定の精度を向上させる必要がある!

研究内容・成果

客観的・正確な年齢査定により「持続的な資源管理」を目指す

新たな統計手法は さまざまな魚の輪紋周期性の検証に広く応用することが可能であり、さらに、魚類だけでなく輪紋が体内に形成されるすべての動植物に適用可能

新たな統計手法のプログラムは、下のホームページで公開
http://cse.fra.affrc.go.jp/okamura/program/agevalid/index.html

客観的かつ正確な年齢査定は、資源管理失敗のリスクを減少させ、持続的な資源管理が可能

主要論文・特許

? 「A novel statistical method for validating the periodicity of vertebral growthband formation in elasmobranch fishes. 」Can. J. Fish. Aquat. Sci. 66, 771-780 (2009)

? 「A resource selection model for analyzing pseudoreplicated data due to grouping behavior of animals. 」J. Agri. Biol. Env. Stat. 13, 294-312 (2008)

受賞評価のポイント

本研究業績は、これまで曖昧に行われてきた魚類の輪紋周期性の検証について、客観的に有効性を評価できる新たな統計モデルを開発したものであり、今後の水産生物資源の持続的利用に大いに活用されることが期待される。

連絡先

独立行政法人水産総合研究センター

〒236-8648 神奈川県横浜市金沢区福浦2-12-4

TEL: 045-788-7514

お問合せ先

農林水産技術会議事務局研究調整課

代表:03-3502-8111(内線5810)
ダイヤルイン:03-3502-7399
FAX番号:03-5511-8622