このページの本文へ移動

農林水産技術会議

メニュー

若手農林水産研究者表彰

平成24年度(第8回)業績概要

超強力小麦新品種「ゆめちから」の開発及び実用化に関する研究

受賞者西尾 善太 氏 38歳

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター 主任研究員

略歴

平成11年東京大学大学院農学生命科学研究科修了。北海道農業試験場研究員、ワシントン州立大学訪問研究員を経て、平成20年より現職。農学博士。

業績概要

主な業績

非常に低いパン用小麦の国内自給率の向上に役立つ、製パン性が画期的に優れる小麦新品種「ゆめちから」を開発した。国産パン用として従来の春まきではなく、多収性の秋まき品種でこれを実現したことにより、国産パン用小麦安定供給の途を開いた。
「ゆめちから」において、土壌伝染性で薬剤防除が不可能なコムギ縞萎縮病に関し我が国最強レベルの抵抗性を獲得し、かび毒による小麦の汚染が大きな問題となっているコムギ赤かび病抵抗性についても北海道向け品種として最強レベルとした。

コムギ縞萎縮病抵抗性の抵抗性遺伝子座を明らかにし、「ゆめちから」における抵抗性を飛躍的に改良することにより、今後の我が国の小麦の品種改良に大きく貢献した。

従来の国産小麦には存在しなかった強靱なグルテンを持ち、かつ、高タンパク含量の超強力秋まき小麦を選抜し、超強力小麦の高分子・低分子グルテニンの遺伝子の組み合わせを持つ「ゆめちから」が実需者から高い評価を得ることを実証した。

「ゆめちから」の育成から、「ゆめちから」の栽培法、さらに「ゆめちから」の優れたグルテンの特徴を活かしたパン・中華麺等の高付加価値製品の開発まで携わることにより、国産原料食品の需要を拡大し、食品産業の振興を可能にするとともに にするとともに、我が国の国産小麦の自給率向上への途を開いた。

背景

「食の安全・安心」や「食料自給率の向上」が求められる昨今にあって、日本人の主食の一つである「パン」用の小麦の自給率は、約3%にとどまっていた。

研究内容・成果

土壌伝染性で防除が困難なコムギ縞萎縮病に対する抵抗性を、従来品種に比べて画期的に向上させるとともに、抵抗性遺伝子の位置を解明した。

「ゆめちから」による国産パン用小麦の安定供給と食料自給率の向上に向けて

コムギ縞萎縮病抵抗性および赤かび病抵抗性が優れることによる生産者への貢献

高品質で安全な国産小麦のパン・中華麺・パスタの供給による消費者への貢献

国産中力小麦とのブレンド利用による市場拡大と、食料自給率向上への貢献

主要論文・特許

?「Mapping a gene conferring resistance to Wheat yellow mosaic virus in European winter wheat cultivar ‘Ibis’ (Triticum aestivum L.)」Euphytica、第176巻(2010)

?「Deoxynivalenol Distribution in Flour and Bran of Spring Wheat Lines withDifferent Levels of Fusarium Head Blight Resistance」Plant Disease、第94巻(2010)

?「Microsatellite Marker-assisted Selection of Fusarium Head Blight Resistancein Backcrossed Japanese Winter Wheat Lines」Breeding Science、第58巻(2008)

受賞評価のポイント

製パンの品質、コムギ縞萎縮病抵抗性のいずれもが、従来の国産小麦と比べて画期的に優れる新品種「ゆめちから」の育成から実用化まで中核メンバーとして取り組み、さらにコムギ縞萎縮病抵抗性遺伝子座を特定することに成功したことが高く評価された。

連絡先

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター

〒082-0081 北海道河西郡芽室町新生南9-4

TEL:0155-62-9210

お問合せ先

農林水産技術会議事務局研究調整課

代表:03-3502-8111(内線5810)
ダイヤルイン:03-3502-7399
FAX番号:03-5511-8622