このページの本文へ移動

農林水産技術会議

メニュー

若手農林水産研究者表彰

平成17年度(第1回)業績概要

生殖細胞の異種間移植を利用した魚類養殖法に関する研究

受賞者:吉崎 悟朗氏 39歳

国立大学法人 東京海洋大学 助教授

略歴

平成5年東京水産大学水産学研究科博士卒、テキサス工科大学研究員を経て、平成7年から東京水産大学(現東京海洋大学)。水産学博士

業績概要

主な業績

マグロのように大型で飼育が難しい魚種の卵や精子を、小型で扱いやすいアジやサバのような魚種に生産させる技術の開発を目指し、魚類の代理親魚養殖の基盤技術を確立した。
本研究では、ニジマスを材料に用い、卵と精子のおおもとの細胞である始原生殖細胞を、クラゲ由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子で標識し、この蛍光を指標に本細胞を生きた状態で大量に単離・精製する技術を確立した。単離した始原生殖細胞を免疫系が未熟で異種細胞を拒絶する能力を保持しない孵化直後の稚魚の腹腔内に移植すると、移植した始原生殖細胞は、宿主の生殖腺に向かって自発的に移動し、そこに取り込まれた後、宿主の生殖腺内で機能的な卵や精子にまで分化した。さらに、本移植技術を異種間にも応用することで、ニジマスの卵や精子を生産するヤマメを作出し、得られた配偶子由来の正常なニジマス次世代個体を得ることに成功した。
一方、魚類においては卵あるいは胚を凍結保存する方法は確立しておらず、絶滅危惧種や優良品種の遺伝子資源を半永久的に保存する方法が存在しない。そこで、単離した始原生殖細胞を液体窒素内で凍結保存する技術を確立した。また、この凍結細胞を宿主に移植することで、凍結細胞に由来する次世代個体を得ることにも成功している。
本成果を、単離した生殖細胞の試験管内培養技術と組み合わせることで、培養細胞に由来する魚類個体を作出することも期待される。

主要論文・特許

「GFP-labeling of primordial germ cells using a non-transgenic method and its application for germ cell transplantation in salmonidae」, Biol. Reprod., 73, 88-93 (2005)

「Surrogate broodstock produces salmonids.」, Nature,430,629-230 (2004)

受賞評価のポイント

本研究業績は、魚類の始原生殖細胞を単離し、異種間移植によって卵や精子を生産する技術を開発したものであり、新たな魚類養殖法である代理親魚養殖への道を拓いた点で評価できる。また、始原生殖細胞の単離・凍結保存技術の確立により、卵の凍結保存が困難な魚類について、遺伝資源保存への応用が期待される。

連絡先

国立大学法人 東京海洋大学

〒108-8477 東京都港区港南4-5-7

TEL: 03-5463-0558

お問合せ先

農林水産技術会議事務局研究調整課

代表:03-3502-8111(内線5810)
ダイヤルイン:03-3502-7399
FAX番号:03-5511-8622