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農林水産技術会議

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若手農林水産研究者表彰

平成19年度(第3回)業績概要

耐病性形質識別マーカーを用いた魚類の分子育種法に関する研究

受賞者:坂本 崇 氏 38歳

国立大学法人 東京海洋大学 海洋科学部 准教授

略歴

平成8年東京水産大学大学院水産学 研究科博士課程修了、グエルフ大学研究員を経て、平成11年から東京水産大学 (現東京海洋大学)。博士(水産学)

業績概要

主な業績

水産養殖においては、生産過程で毎年疾病が発生し、その被害額は、約115億円/年と 推定されている。魚病被害の軽減には、耐病性系統の育種が有効である。しかし、耐病 性形質は次世代への伝達の有無を病原体感染試験なしには識別できず、耐病性系統の育 種を行うには感染による選抜を常に繰り返す必要があり、また、選抜個体は病原体の保 有者となってしまうことから養殖現場で育種を進めることが非常に困難であった。そこ で本研究では、病原体感染試験なしに耐病性形質の次世代への伝達を識別可能な遺伝 マーカーを開発することを目的とした。
本研究では、水産育種における遺伝マーカーとしてマイクロサテライトマーカーの有 効性を報告した。そして、養殖魚類における遺伝マーカーを用いた連鎖地図、および、 それを基に耐病性形質を識別可能な遺伝マーカーを世界で初めて報告した。
本研究では、ニジマス、アユ、ヒラメ等の複数の養殖魚類において、それぞれ耐病性 形質を識別可能な遺伝マーカーを開発し、それ用いた分子育種は実用化レベルにある。
今後の研究により、魚病被害・水産用医薬品の使用量の軽減から、消費者に安全・安 心な養殖生産に貢献するとともに、歩留まり向上から環境への負荷軽減が期待される。

主要論文・特許

「A microsatellite linkage map of rainbow trout (Oncorhynchus mykiss) characterized by large sex-specific differences in recombination rates. 」 Genetics. 155, 1331-1345 (2000)

「Quantitative trait loci (QTLs) associated with resistance / susceptibility of infectious pancreatic necrosis (IPN) in rainbow trout (Oncorhynchus mykiss). 」 Molecular Genetics and Genomics. 265, 23-31 (2001)

受賞評価のポイント

養殖魚類でマイクロサテライトマーカーを用いた分子育種に世界で初めて成功した。 養殖魚の生産性向上、品質・安全性向上につながる成果である。マーカー開発から連鎖 地図作成、疫病抵抗性遺伝子座の特定、育種の実践に至るまで、実用を意識した研究を 展開していることが高く評価された。

連絡先

国立大学法人 東京海洋大学

〒108-8477 東京都港区港南4-5-7

TEL 03-5463-0450

お問合せ先

農林水産技術会議事務局研究調整課

代表:03-3502-8111(内線5810)
ダイヤルイン:03-3502-7399
FAX番号:03-5511-8622