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農林水産技術会議

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若手農林水産研究者表彰

平成21年度(第5回)業績概要

高等植物におけるニコチアナミンの機能解析と有用作物の作出

受賞者:高橋 美智子 氏 37歳

国立大学法人宇都宮大学 農学部 准教授

略歴

平成10年東京大学大学院農学生命科学研究科(博士課程)修了。平成14年に東京大学大学院生命科学研究科助手。平成20年より現職。農学博士。

業績概要

主な業績

世界の土壌の約30%は、pHの高い土壌であり、そのような土壌では作物が鉄欠乏を引き起こし、正常に生育しない。
オオムギは鉄欠乏に強く、イネは鉄欠乏に弱いことがわかっており、この鉄欠乏耐性の差の要因の一つは、イネ科植物の鉄獲得機構の主要因子であるムギネ酸分泌能にあると考えられた。本研究では、ムギネ酸類の生合成にはイネ科植物に特異的なニコチアナミンアミノ基転移酵素(NAAT)が重要と考えた。NAATを鉄欠乏オオムギ根から精製単離し、その部分アミノ酸配列をもとに2種のNAAT遺伝子を単離した。さらに、オオムギNAATゲノム遺伝子を導入することによって、ムギネ酸類分泌能を強化した世界で最初の「鉄欠乏耐性イネ」の創製した。
一方、イネ科植物に特異的なNAATを双子葉植物であるタバコにおいて過剰発現させ、その形質を詳細に解析した。これにより、ニコチアナミンが鉄、亜鉛、マンガン、銅などの体内輸送において必須であり、高等植物の生殖成長、種子の稔実に不可欠であることを明らかにした。この成果は鉄含量の高いコメの作出に寄与した。
さらに、ニコチアナミンを過剰に合成するタバコはニッケル過剰土壌に耐性を示し、ファイトレメディエーションに有用であることを示した。

* NAATは、ムギネ酸類生合成経路においてニコチアナミンのアミノ基を転移し、中間体(ケト体)を生成する反応を触媒する。

背景

1)植物の生合成する金属のキレーター2種(ニコチアナミン(NA)、ムギネ酸)に着目
* NAは、植物に広く存在する3価およ2価の、亜鉛、マンン、、ニッケルなどのキレーター*ムギネ酸は、イネ科植物に特異的な3価の鉄のキレーター(キレーター:金属と結合し、金属錯体をつくる化合物)
2)世界の土壌の約30%は、pHが高く作物が鉄欠乏のために正常に生育できない不良土壌
3)ニッケルが高濃度に存在するために植物が生育不良になる土壌も存在

研究内容・成果


他の作物へ応用することにより、世界の食糧問題・環境問題に貢献

主要論文・特許

?「Enhanced tolerance of rice to low iron availability in alkaline soils using barley nicotianamine aminotransferase genes. 」 Nature Biotech.19. 466-469(2001)

?特許第4084502号 「ニコチアナミン・アミノ基転移酵素を導入した鉄欠乏耐性イネ科作物の創製」 (2008)

受賞評価のポイント

本研究業績は 植物における鉄研究に関して 植物体内の金属輸送に関わるニコチアナミンの機能を解析し、イネにオオムギの遺伝子を導入して世界で初めて鉄欠乏耐性イネの創製に大きく貢献したものであり、遺伝子組換えによって不良土壌で育つ作物ができることを世界に先駆けて示した点で高く評価された。

連絡先

国立大学法人宇都宮大学

〒321-8505 栃木県宇都宮市峰町350

TEL: 028-649-5422

お問合せ先

農林水産技術会議事務局研究調整課

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