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農林水産技術会議

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若手農林水産研究者表彰

平成24年度(第8回)業績概要

近赤外分光法を用いた熱帯産農産物の品質評価システムの開発及び利用に関する研究

受賞者平良 英三 氏 35歳

国立大学法人琉球大学 農学部 助教

略歴

平成17年鹿児島大学連合農学研究科修了。琉球大学農学部助手を経て、平成19年より現職。農学博士。

業績概要

主な業績

南西諸島は亜熱帯気候に属しており、サトウキビやマンゴー、パインなどユニークな作物が栽培されている。サトウキビでは品質(糖度)に応じた価格が決定される品質取引制度が導入されており、迅速で低コストな品質評価法の確立が望まれている。また、沖縄の代表果実であるマンゴーにおいても品質を保証する技術開発が望まれている。
一般的な品質分析では対象のサンプルを搾汁するなど「前処理」を必要とし、薬品等を使用して分析を行うが、これに対して、非破壊で品質評価が可能な近赤外分光法(NIR法)の応用が期待される。NIR法は水分を多く含む物質に対してもOH基やCH基などの化学情報を取得できるため、農産物の成分情報を非破壊で測定可能である。そこで、サトウキビやマンゴー等の品質評価を行うための技術開発を行った。さらに、取得した糖度などの品質情報を営農支援に活かすための研究を行い、以下のような成果をあげた。

従来、サトウキビの品質は搾汁液を利用して測定されていたが、細裂したサンプルを直接分析する「細裂NIR法」を確立した。同システムは、平成18年度から沖縄県の10製糖工場に導入され、全システムの維持・管理を行っている。また、個々の機器をネットワーク化することによ て することによって、低コストな機器管理を実現している。さらに、同システムを利用して肥料成分(窒素、カリウム等)を同時に分析し、農家への栽培支援の効果を実証した。

マンゴーの糖度を測定する検量線を開発するとともに、品質と栽培環境に関する研究を行った。産地の全マンゴーについて糖度分布を明らかにするとともに、品質のデータベースを構築することによって、農家の個別診断・評価が可能となった。糖度測定システムは品質評価だけでなく、農家への栽培指導、販売ツールとして利用されている。

背景

サトウキビやマンゴー等の農産物では、非破壊・迅速に品質を評価する技術が求められている また 品質を評価するだけでなく 品質を高めるための栽培管理が課題となっている。

研究内容・成果

成果のポイントと今後の展開

サトウキビ細裂NIR法による品質評価システムを確立した。工場現場での運用・管理に関する指導を行うとともに、生産管理へフィードバックするシステムの効果を実証した。

沖縄産マンゴーの品質評価技術を検討し、施設導入に貢献した。品質データを活用した栽培管理への応用を検証し、その効果を実証した。

高品質な栽培技術の確立が期待できるとともに、圃場に合わせた合理的な管理によって肥料使用量の適正化と環境負荷軽減が期待される。

主要論文・特許

?「Automated quality evaluation system for net and gross sugarcane samples a using Near Infrared Spectroscopy」、Journal of NIRS、 Vol.18.

?「キーツ種マンゴーの官能検査と品質の関係」、開発学研究、第21巻第1号.

?「NIRとGISを用いたサトウキビの高品質化支援情報システムの開発(第3報)」、農業機械学会誌 vol.71(3) .

受賞評価のポイント

近赤外分光法を用い、サトウキビではミネラル成分を迅速・低コストで測定可能に、マンゴーでは糖度を安定的に測定できるようになる品質評価技術を開発した。開発技術はすでに工場等で活用されており、地域の産業振興に貢献している点が高く評価された。

連絡先

国立大学法人琉球大学

〒903-0213 沖縄県西原町千原1

TEL:098-895-8770

お問合せ先

農林水産技術会議事務局研究調整課

代表:03-3502-8111(内線5810)
ダイヤルイン:03-3502-7399
FAX番号:03-5511-8622