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農林水産技術会議

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若手農林水産研究者表彰

平成22年度(第6回)業績概要

ブタ精液の凍結及び融解法の開発による人工授精技術の高度化

受賞者:岡﨑 哲司 氏 29歳

大分県農林水産研究指導センター畜産研究部 研究員

略歴

平成16年広島大学生物生産学部卒業。同年大分県畜産試験場。平成22年同大学院生物圏科学研究科修了。平成22年より現職。農学博士。

業績概要

主な業績

養豚経営における種付けは、自然交配と新鮮精液を希釈した液状精液による人工授精で行われているが、雄ブタの多頭飼育による経営圧迫や日数経過による液状精液の品質低下など効率的ではない。一方、これらの課題を解決する凍結精液による人工授精技術は古くから存在するが 繁殖成績が極めて低く実用化に至 ていない そこで 精子と精漿(精液の液体部)の生理学的な機能を解析し、現場で利用可能な凍結精液による人工授精法の開発を試み、以下の成果をあげた。

凍結希釈液の浸透圧およびGlycerol濃度の最適化を行い、ブタ精子専用の凍結希釈液を開発

免疫担当細胞ではない精子の細菌認識による生存性低下機構を初めて解明し、それを基に新たな精子処理法を開発することで、ブタ精子を効率的に凍結することに成功

精子融解ストレスを緩和するCa2+キレート剤および人工授精後の胚の着床を促進させるcortisolを含有した融解液を開発
これらの技術を利用して作出された凍結精液による人工授精後の妊娠率や母豚の一腹産子数は新鮮精液と同レベルであることが確認された。
本技術は、低コストかつ簡易に取り組めるものであり、大分県のみならず全国的な普及が見込まれている。さらに、病原性を含む動物由来物質を除去していることから、オエスキや豚呼吸器繁殖症候群 豚呼吸器繁殖症候群,口蹄疫など家畜伝染性疾病 家畜伝染性疾病の予防を可能とすることでも期待され、今後の養豚界の基礎を支える技術となると期待される。

背景

自然交配や新鮮精液による人工授精成績は精液性状に依存し、それが経営の不安定化を招いている。凍結精液による人工授精法の開発と高度化はその課題解決のみでなく、将来を見据えた遺伝資源の保存を可能とする。

研究内容・成果

養豚業における次世代型人工授精法の定着化を目指す

生産性を高め、かつ、農場における高度な衛生環境を持続できる養豚経営へ貢献

主要論文・特許

? 「Seminal plasma damages sperm during cryopreservation, but its presenceduring thawing improves semen quality and conception rates in boars withpoor post-thaw semen quality」Theriogenology, 71, 491-498 (2009)

? 「Improved conception rates in sows inseminated with cryopreserved boarspermatozoa prepared with a more optimal combination of osmolality andglycerol in the freezing extender」Animal Science Journal, 80, 121-129(2009)

? 「ブタ精子の凍結融解に及ぼす精漿の影響とその利用による人工授精後受胎性向上」平成20年度九州沖縄農業成果情報【技術・普及】第24号

受賞評価のポイント

本研究業績は、これまで実用段階になかったブタの凍結精液を用いた人工授精技術を新たな技術を開発することで実用的にしたものであり、これらの技術を世界に先駆けて開発した点、家畜伝染性疾病の予防を可能とする技術である点で高く評価された。

連絡先

大分県農林水産研究指導センター

〒879-7111 大分県豊後大野市三重町赤嶺2328-8

TEL: 0974-22-0673

お問合せ先

農林水産技術会議事務局研究調整課

代表:03-3502-8111(内線5810)
ダイヤルイン:03-3502-7399
FAX番号:03-5511-8622