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農林水産技術会議

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若手農林水産研究者表彰

平成23年度(第7回)業績概要

地震・洪水に強い堤防、水路護岸等の盛土の補強技術の開発

受賞者:松島 健一 氏 36歳

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 主任研究員

略歴

平成10年大阪府立大学農学部卒業。農林水産省 農業工学研究所 研究員を経て、平成23年より現職。農学博士

業績概要

主な業績

東日本大震災を契機に、耐震基準を満たしていない既存不適格な構造物の崩壊リスク、洪水や津波による背後地の被災リスクの完全な防止または軽減策の確立が喫緊の課題となっている。
本研究では 防災 減災対策に関する技術的な課題について取り組み洪水と地震を同時に満足させる画期的な盛土の補強技術を開発した。以下に具体的な成果をあげる。

従来仮設材として見なされていた土のうに着目し、土のうによる土質材料の補強メカニズムを明らかにし、補強効果が高い尾ひれの付いた扁平状の大型土のうを開発した。

上記の土のうを盛土内側が低くなるように傾斜して、法面に積み上げた盛土構造を考案した。要素実験及び実物大実験により、従来のように土のうを水平に積んだ盛土は、震度5程度の地震で崩壊するが、上述のように盛土背面に傾けて土のうを積むことで、滑動抵抗力が高まり、震度7程度の地震に対しても崩壊しないことがわかった。

洪水時の越流現象に関しては、土のみで構築された盛土は越流に対して極めて弱いが、上記の補強技術を適用することによって、一時的な洪水に対しても決壊を防止できることがわかった。

本技術は、能登半島沖地震で決壊したため池の強化復旧事業に導入されたほか、特殊な施工技術や機械を要せず、人力主体で施工が可能であることから、バングラデシュにおいて盛土の波浪侵食対策として現地導入された。

背景

災害防止または軽減を図る上で、耐震基準を満たさない既存不適格構造物の耐震対策、想定を上回る洪水時の越流侵食対策は極めて重要であり、地震・洪水に強く、簡便な盛土の補強技術が求められている。

研究内容・成果

自然災害に強い農村インフラの構築を目指して

地震・洪水対策を同時に図れ、堤防等の決壊防止・二次災害の軽減に貢献できる。

国内に限らず、洪水害が深刻な途上国でも普及可能。

東日本大震災で破堤した防潮堤の耐震・耐津波化技術への応用が期待できる。

主要論文・特許

?「ジオシンセティックスを用いた土質材料の補強メカニズムの解明と水利構造物への適用性に関する研究」農工研所報49(2009)
http://www.nkk.affrc.go.jp/library/publication/seika/hokoku/49/49_2.pdf

? "Shear st th reng and d f ti e ormation ch t i ti haracteristics of geosynth ti e c soil bagsstacked horizontal and inclined", Geosynthetics International, 15, No. 2(2008)

? 特許第4627464号「土嚢の傾斜積み工法」(2010)

受賞評価のポイント

本研究業績は、力学的に安定した土のう形状や積み方を実験的理論的に見出し、土を補強する効果が高いヒレ付きの特殊形状の土のうを開発したものであり、地震や洪水の災害現場での復旧工法として土のうの高度な利用技術を完成させた点が高く評価された。

連絡先

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所

〒 305-8609 茨城県つくば市観音台2-1-6

TEL 029-838-7575

お問合せ先

農林水産技術会議事務局研究調整課

代表:03-3502-8111(内線5810)
ダイヤルイン:03-3502-7399
FAX番号:03-5511-8622