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農林水産技術会議

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若手農林水産研究者表彰

平成26年度(第10回)業績概要

食品媒介性原虫感染症に対する新規薬剤の技術開発

受賞者 加藤 健太郎 氏 39歳

国立大学法人 帯広畜産大学 原虫病研究センター 特任准教授

略歴

平成15年東京大学大学院農学生命科学研究科修了(特例短縮)。米国国立衛生研究所 Visiting fellow、東京大学大学院農学生命科学研究科助手、助教を経て、平成25年より現職。 東京大学大学院農学生命科学研究科准教授(委嘱)、岐阜大学大学院連合獣医学研究科特任准教授を兼任。博士(獣医学)。

業績概要

主な業績

現在我が国において、原虫病を含めた感染症による食に対する危機感、それに伴った風評被害が蔓延しており、特に食肉産業における国民の不信感は極めて大きい。そこで本研究では、食品媒介性の原虫感染症、特にトキソプラズマ症について、感染源となる家畜を対象として、現在の原虫病対策に取って代わり、原虫独特の生活環を遮断することができる革新的な抗原虫薬の技術開発を行った。

自らが行ったウイルスプロテインキナーゼの研究の経験と知見を原虫研究に応用し、原虫プロテインキナーゼを薬剤標的とする新規の原虫薬の開発を行った。

ウイルスの感染レセプター同定系を原虫研究へと応用し、他の解析系も用いることで、宿主細胞側のいくつかの糖鎖分子や蛋白質を、原虫の分泌蛋白質に対応する感染レセプター、結合分子として同定した。さらに、同定した糖鎖類やそれらの派生分子について、新規の原虫薬として薬効の解析を行った。

開発した原虫薬について、原虫の薬剤耐性機構の解明を行った。

現状の抗原虫薬で問題となっている休眠型への移行と薬剤耐性の問題を克服するめ、虫体の根治を図る理想的な薬剤のスクリーニング系の開発等の技術開発に成功した。

本来の宿主動物である家畜を含めた動物での感染実験によって、実際にトキソプラズマに対する新規薬剤の薬剤効果の検証を行った。

背景

我が国では、原虫病を含めた感染症による食に対する危機感や風評被害が起こっているため、現在の原虫病対策に取って代わる革新的な技術開発が求められている。

研究内容・成果

食品媒介性原虫感染症の撲滅に向けて

原虫独特の感染環を遮断する新しい抗原虫薬の技術開発。

畜産業界で問題となっている畜産動物における人獣共通感染症を含めた原虫感染症の撲滅に貢献。

食への安心感と信用回復による畜産物・食料品市場での経済効果に寄与。

主要論文・特許

?特願2014-109262号「抗原虫薬のスクリーニング方法及び組換えトキソプラズマ株」(2014)

?「 Roles of Apicomplexan protein kinases at each life cycle stage 」 Parasitology International, 61, 224-234(2012)

?「Effects of dextran sulfates on the acute infection and growth stages of Toxoplasma gondii」 Parasitology Research, 112, 4169-4176(2013)

受賞評価のポイント

ウイルス研究で培われた知見・技術を、原虫研究へ応用するという従来にない独創的なアプローチによって、世界に先駆け原虫感染レセプター同定系の確立や新規の原虫薬の開発を行った点が高く評価された。

連絡先

国立大学法人 帯広畜産大学 原虫病研究センター

住所:〒080-8555 北海道帯広市稲田町西2線13

TEL:0155-49-5645

お問合せ先

農林水産技術会議事務局研究調整課

代表:03-3502-8111(内線5810)
ダイヤルイン:03-3502-7399
FAX番号:03-5511-8622