若手農林水産研究者表彰
平成20年度(第4回)業績概要

受賞者:小川 健一 氏 39歳
岡山県生物科学総合研究所 主任チームリーダー(所長補佐役)
略歴
平成7年京都大学大学院理学研究科植物学専攻修了、日本学術振興会特別研究員、東レ株式会社等を経て、平成10年から現研究所勤務。博士(理学)
業績概要
主な業績
グルタチオンは、外来異物の解毒や抗酸化に機能することが知られているが、受賞者は、グルタチオンが植物体内で、幅広い生長・生理現象を制御する因子としても機能することを明らかにした。すなわち、グルタチオンの合成は、光合成に大きく依存し、合成されたグルタチオンの量に応じて炭素同化が促進され、成長と開花量が調節されることを見出した。また、一定期間以上の低温で開花が促進される現象(春化)にもグルタチオンが深く関与することを明らかにし、グルタチオンの投与により開花・結実の調節を可能とした。
さらに、グルタチオンが植物体内の特定のタンパク質に結合して、そのタンパク質の機能を制御することを世界に先駆けて解明したことで、グルタチオンと細胞内タンパク質の結合を促進する酸化型グルタチオンが農作物の収穫量・果実品質を大幅に向上させることを発見した。グルタチオンの農業利用(収穫量や品質、開花制御など)については、企業や各地の試験場レベルで実用試験が進められており、食料増産や品質向上に大きく貢献することが期待される。


主要論文・特許
「 Level of glutathione is regulated by ATP-dependent ligation of glutamate and cysteine through photosynthesis in Arabidopsis thaliana: Mechanism of strong interaction of lightintensity with flowering」 Plant & Cell Physiology 45, 1-8 (2004)
「Reduced glutathione is a novel regulator of the vernalization-induced bolting in the rosette plant Eustoma grandiflorum」 Plant & Cell Physiology 45, 129-137 (2004)
本研究業績は、グルタチオンの従来知られなかった機能と作用機構を解明し、その成果が農作物の単位面積あたりの収穫量や果実品質を大幅に向上させる技術に応用可能であることを示唆しており、革新的な技術として今後更なる発展が期待される。
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