若手農林水産研究者表彰
平成25年度(第9回)業績概要

受賞者 手柴 真弓 氏 38歳
福岡県農業総合試験場 病害虫部 主任技師
略歴
平成10年九州大学農学部卒業。福岡県福岡農業改良普及指導センター技師を経て、平成13年福岡県農業総合試験場病害虫部技師。平成15年より現職
業績概要
主な業績
フシコナカイカラムシは果樹全般を加害する害虫であり、特にカキでは果実にすす病や火ぶくれ症を引き起こし、商品価値を大きく損なわせる。本虫は果樹の粗皮の隙間やヘタの間など狭い場所を好むため、薬剤による防除が難しい。そこで、土着天敵を効率的に活用した 総合防除法の開発を目的として、以下の成果をあげた。
本虫の土着天敵であるフシコナカイカラクロハチに対する薬剤感受性を検定。天敵に影響の少ない薬剤を使った天敵活用型の防除体系を構築した。現在、本県ではこの防除体系が約1,000haのカキ園(県内カキ栽培面積の約01月02日)に普及している。
本虫は主に果樹の粗皮などの隙間に生息し、春先、新芽に寄生する。この性質を利用し、樹の地際部の粗皮を削り、そこに高濃度の殺虫剤(シノテフラン)を刷毛で塗る樹幹塗布法を開発した。この方法により、薬効成分が樹液の流動に乗り樹の隅々まで転流。枝葉に寄生している本虫の効率的な防除が可能となった(2009年、樹幹塗布剤として農薬登録)。
本虫の防除適期はふ化幼虫時期であるが、微小のため、ほ場での発生確認は困難である。そこで、雌成虫が雄成虫を誘引する物質の成分を同定し、性フエロモン剤を開発。フエロモントラツフに利用することで、雄成虫の発生時期を確認。その時期から有効積算温度法により次世代の幼虫ふ化時期の予測が可能となった。また、このフエロモン剤を本虫の交信撹乱へも応用。現地カキ園において被害果率を慣行防除の01月20日に抑える高い防除効果を確認した。
本虫の性フエロモンを同定する際に天敵の寄生蜂を誘引する新たな物質(シクロラハンテユリルフチレート:略称CLB)を発見。このCLBを利用した防除効果を現地カキ園にて検証中。
背景
フシコナカイカラムシはその生態から薬剤による防除が困難な害虫であり、果樹全般、特にカキでは被害が大きい。また、本虫はヘタの隙間などに好んで生存するため、輸出に際して検疫上の大きな問題であり、産地では効果的な防除法の開発が強く求められている。
研究内容・成果


主要論文・特許
フシコナカイカラムシPlanococcus kraunhiae (Kuwana)(カメムシ目:コナカイカラムシ科)に対する性フエロモン成分による交信攪乱効果, 日本応用動物昆虫学会誌,第53巻 p173~180(2009)
A new approach for mealybugフエロモンmanagement: recruiting an indigenous,but ‘non-natural’ enemy for biological control using an attractant(Entomologia Experimentalis et Applicata,vol.142 , p211~215(2012)
特許第4734553号,「フシコナカイカラムシの性誘引剤」(2011年登録)
果樹全般を加害する害虫フジコナカイガラムシの有用な土着天敵を明らかにし、天敵を効率的に活用した総合防除体系を構築し、その技術がすでに県内において実用化されていることが高く評価された。
連絡先
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お問合せ先
農林水産技術会議事務局研究調整課
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