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農林水産技術会議

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若手農林水産研究者表彰

平成19年度(第3回)業績概要

シロアリと卵擬態菌核菌の相互作用の解明とそのシロアリ駆除技術への応用

受賞者:松浦 健二 氏 33歳

国立大学法人 岡山大学大学院環境学研究科 助教

略歴

平成14年京都大学大学院農学研究科博士後期課程を在学期間短縮特例にて修了、学位取得。ハーバード大学博士研究員を経て、平成16年より現職。博士(農学)

業績概要

主な業績

シロアリは被害の甚大さと予防、駆除の困難さの点で見れば、人類にとって最も厄介な害虫の一つである。加害された木材の外側から大量に薬剤を投入して殺虫する従来の駆除法は、シックハウス症候群などの健康被害や環境汚染につながる上、コストも大きい。シロアリは営巣する木材自体を摂食するため、毒餌を用いた従来の手法にも限界が指摘されている。
高度な社会性昆虫であるシロアリを最も効率的に駆除する方法は、その社会性を逆に利用することである。シロアリの職蟻は女王の産んだ卵を育室に運搬して世話をする。本研究では、シロアリの卵に物理的、化学的に擬態して巣の中に生息する菌核菌を発見し、この巧みな卵擬態メカニズムの解明に基づき、擬似卵を用いてシロアリ自ら殺虫活性物質を巣内の生殖中枢へ運搬させる技術を発明した。また、世界で初めてシロアリの卵認識フェロモンの同定にも成功した。
卵運搬を利用した駆除法は、シロアリ自らに殺虫剤を生殖中枢へと運搬させるため、微量の薬剤できわめて効果的にコロニーの中枢を破壊でき、駆除コストも大幅に削減できる。既存の駆除法よりも格段に効率的にコロニーを駆除でき、安全かつ経済的であるため、世界のシロアリ駆除技術を刷新すると考えられる。
低コストで健康や環境にも配慮したシロアリ駆除が求められている現在、シロアリの社会行動を賢く利用した本技術は、まさにそのニーズを満たす画期的な駆除技術である。

主要論文・特許

「Termite-egg mimicry by a sclerotium-forming fungus」Proc. R. Soc. Lond. B vol.273,p.1203-1209, 2006

「Symbiosis of a termite and a sclerotium-forming fungus: Sclerotia mimictermite eggs」Ecol. Res. vol.15, p.405-414, 2000

受賞評価のポイント

シロアリの卵に擬態して巣の中に共生する菌核菌を世界で初めて発見し、シロアリの卵保護本能を利用したシロアリ駆除技術を開発した。菌核菌の擬態を発見した観察眼、シロアリの駆除にシロアリの本能を利用しようという独創性、そして社会に役立つ成果に纏め上げる行動力が高く評価された。

連絡先

国立大学法人 岡山大学大学院

〒700-8530 岡山市津島中1-1-1

TEL 086-251-8379

お問合せ先

農林水産技術会議事務局研究調整課

代表:03-3502-8111(内線5810)
ダイヤルイン:03-3502-7399
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