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農林水産技術会議

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若手農林水産研究者表彰

平成26年度(第10回)業績概要

飛ばないナミテントウの育成と生物防除への応用に関する研究

受賞者 世古 智一 氏 37歳

独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター 主任研究員

略歴

平成14年近畿中国四国農業研究センター採用。平成19年岡山大学大学院博士後期課程修了。平成23年より現職。博士(学術)。

業績概要

主な業績

ナミテントウは難防除害虫アブラムシの主要天敵であり、化学農薬に替わる防除資材としての利用が期待されていた。しかし、飛翔能力が高いため放飼後の作物上での定着が安定しないのが課題であった。

ナミテントウ集団の中から飛翔能力の低い個体を検出できる技術を開発し、飛翔能力を欠くナミテントウ系統(飛ばないナミテントウ)を育成した。本系統が、施設だけでなく露地でも生物防除に有効である事を実証した。

選抜中止後の飛翔能力の回復を防止する技術や、近親交配の影響を回避するための系統間交雑法などの品質維持手法を開発した。

新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業「多種多様な栽培形態で有効な飛ばないナミテントウ利用技術の開発(2008~2010年度)」を総括し、大量増殖系の構築、防虫ネット被覆下での露地野菜・花卉類での有効性の実証、施設野菜類での飛ばないナミテントウの効果的な利用法の開発に貢献した。飛ばないナミテントウは、2013年9月25日に施設野菜類で農薬登録され(登録番号:第23357号)、 2014年6月から天敵製剤として販売が開始された。

製剤の実用化に合わせて、施設野菜類での飛ばないナミテントウの効果的な利用法を解説した技術マニュアルを発行し、各普及・指導機関先や施設園芸の生産者に配布するとともに、近畿中国四国農業研究センターWebにて公開した。

背景

ナミテントウは難防除害虫アブラムシの主要天敵であるが、飛翔能力が高いため作物上に定着しにくいのが課題であった。

研究内容・成果

施設栽培での普及と露地栽培での実用化を目指して

本成果の普及により、施設野菜類において薬剤抵抗性アブラムシ対策の確立、地域農産物(マイナー作物)の生産増大、安全な食品の流通促進等の効果が期待される。

全国の野菜栽培面積のうち、天敵製剤が使用できるのは施設栽培であるほんの10%程度。飛ばないナミテントウを露地で実用化することで、広域での環境負荷低減が可能になる。

主要論文・特許

特許第5594657号「遺伝的に飛翔能力を欠くテントウムシの作出方法」(2014)

「天敵の育種:飛翔能力を欠くテントウムシ系統の育成と品質管理」、日本応用動物昆虫学会誌 57(4)219-234(2013)

「Residence period of a flightless strain of the ladybird beetle Harmonia axyridis Pallas (Coleoptera: Coccinellidae) in open fields」Biological Control 47(2)194-198 (2008)

受賞評価のポイント

アブラムシ防除に有効な飛翔能力を欠くナミテントウ系統を育成するとともに、実用化に向けた品質管理法の開発や様々な作物・栽培環境での有効性を実証し、施設野菜類においては既に商品化までされている点が高く評価された。

連絡先

独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター

住所:〒〒721-8514 広島県福山市西深津町6-12-1

TEL:084-923-4100

お問合せ先

農林水産技術会議事務局研究調整課

代表:03-3502-8111(内線5810)
ダイヤルイン:03-3502-7399
FAX番号:03-5511-8622