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農林水産技術会議

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若手農林水産研究者表彰

平成20年度(第4回)業績概要

分子レベルでの味覚受容機構の解明とその応用に関する研究

受賞者:日下部 裕子 氏 37歳

独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 食品機能研究領域 ユニット長

略歴

平成10年東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了、同年より農林水産省食品総合研究所(現 農研機構食品総合研究所)。博士(農学)

業績概要

主な業績

味は食品の品質を決定づける重要な要因であるが、その評価法は人間の味覚に頼る官能評価が主流であり、未だ分子機構を利用したものはほとんど開発されていない。そこで、不明な点が多い味覚受容機構を解明して利用することにより、科学的根拠に基づいた新たな味覚評価系を開発し、従来の官能評価系を補完することを目的とした。
本研究では、まず、独自に開発した味覚DNAチップによる味覚受容関連遺伝子の探索や取得遺伝子の機能解析を行い、明らかにした味覚受容機構を培養細胞内に強制的に導入することで味覚応答を人工的に再現して評価する系を構築した。そして、その構築した味覚評価系を効率よく利用することを目的に、培養細胞の応答測定系を微小空間に集積させたハイスループット探索系※を企業と共同開発した。さらに、構築した味覚評価系と企業と共同開発したハイスループット探索系を組み合わせることにより、新規味物質探索系へ発展させ、今までにその効果が知られていないうま味増強能を有する食品成分の同定に成功した。
この系の開発によって味覚を客観的に評価することが可能になったため、今後、官能評価や味覚センサーなどの従来の味覚評価系を補完する次世代型味覚評価系として食品の開発に寄与することが期待される。

※ハイスループット探索系:多検体を一度に処理することで探索の効率性を上げた系

主要論文・特許

「Regional expression patterns of taste receptors and gustducin in the mouse tongue」Biochemical and Biophysical Research Communications, 312, 500~506 (2003)

「 cDNA microarray screening for taste bud specific genes」Chemical Senses, 30, i12~i13 (2005)

受賞評価のポイント

味覚受容関連遺伝子の効率的な同定に寄与する「味覚DNAチップ」の開発や、遺伝子発現様式の解析による舌の部位による味覚感受性の違いの説明など、味覚研究分野において際立った成果を挙げた。また、これらの成果を利用して食品成分の味質を効率よく評価する系の開発と利用を行ったことで、味覚に関する基礎的研究を食品開発につながる応用研究へと展開したことが高く評価された。

連絡先

独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所

〒305-8642 茨城県つくば市観音台2-1-12

TEL: 029-838-7317

お問合せ先

農林水産技術会議事務局研究調整課

代表:03-3502-8111(内線5810)
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