若手農林水産研究者表彰
平成25年度(第9回)業績概要

受賞者 海老原 克介 氏 39歳
千葉県農林総合研究センター 暖地園芸研究所 上席研究員
略歴
平成10年千葉大学大学院自然科学研究科修了。千葉県農業総合研究センター暖地園芸研究所、千葉県安房農林振興センターを経て、平成21年より現職。
業績概要
主な業績
千葉県のイチゴ栽培では、高温多湿を好む「炭疽病」の発生が苗生産上の問題となっていた。そこで千葉県では、平成12年より「炭疽病」の回避を目的として、夏季冷涼な北海道に苗生産を委託するイチゴリレー苗生産を開始した。しかし一方で、委託先の北海道では、冷涼な気候を好む「萎凋病」の発生が新たに問題となった。
そこで、両病害の対策技術の確立に取り組み、以下の成果をあげた。
北海道における「萎凋病」の防除対策として、水稲3年、イチゴ苗1年を作付する田畑輪換による輪作体系を確立した。
無病苗生産に必要な、増殖用親株や苗における「炭疽病」の検定方法を開発した。
病原菌を委託先に「持ち込まない」、委託先で「増やさない」、委託元に「持ち帰らない」の三原則を掲げて、リレー苗生産における検疫体制を構築した。
田畑輪換により病原菌が死滅する要因には、嫌気条件(酸素欠乏)と温度が関与していることを明らかにした。
これらの成果により、農薬に頼らない「炭疽病」、「萎凋病」の同時防除法を開発し、イチゴ無病苗安定供給のシステム化に成功した。
これまでの13年間で累計約500万株の苗を生産し、千葉県全域のイチゴ生産者に無病苗を供給した。本成果は、県内外で広く活用され、全国的にも普及している。
背景
千葉県のイチゴ栽培では、難防除病害である「炭疽病」、「萎凋病」の発生が問題となっており、無病苗の安定供給体制の確立が求められていた。
研究内容・成果



成果のポイントと今後の展開
苗生産の受委託により、千葉県など産地での育苗労力を省力化した
冷涼な北海道で、新たなイチゴ苗産業の創出に貢献
土壌くん蒸剤を使用しないため、環境保全型農業に貢献
田畑輪換の防除メカニズムは、新たな防除法の開発につながる
主要論文・特許
?「Control of Verticillium dahliae at a strawberry nursery by paddy-upland rotation 」Journal of General Plant Pathology, 76,7-20(2010)
? 「Genetic polymorphism and virulence of Colletotrichum gloeosporioides isolated from strawberry (Fragaria × ananassa Duchesne) 」 Journal ofGeneral Plant Pathology, 76,247-253(2010)
?「 Survival of strawberry-pathogenic fungi, Fusarium oxysporum f.sp.fragariae, Phytophthora cactorum and Verticillium dahliae under anaerobicconditions 」 Journal of General Plant Pathology, in printing (2013) DOI10.1007/s10327-013-0476-0
イチゴ栽培において、「萎凋病」が田畑輪換により防除可能であることを明らかにした。北海道に苗生産を委託するリレー苗生産方式において、イチゴ無病苗の安定供給システムを構築し、県内外で広く活用されていることなどが高く評価された。
連絡先
千葉県農林総合研究センター 暖地園芸研究所
〒294-0014 千葉県館山市山本1762
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お問合せ先
農林水産技術会議事務局研究調整課
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