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農林水産技術会議

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若手農林水産研究者表彰

平成27年度(第11回)業績概要

植木類輸出促進に向けた病害虫の防除手法開発に関する研究

受賞者山田(武田) 藍 氏 32歳

千葉県農林総合研究センター 研究員

略歴

平成19年北海道大学大学院修士課程修了。平成19年より現職。平成27年千葉大学大学院博士後期課程修了。博士(農学)。

業績概要

主な業績

植木・盆栽類は海外で人気が高まり、輸出量が急激に増加しているが、植物寄生性線虫により輸出が阻害される事例が多発している。また、産地では害虫ケブカトラカミキリの発生により、イヌマキの安定生産が脅かされている。そこで本研究では、植木・盆栽類の輸出促進のため、いち早くこれらの防除体系の確立に取り組んだ。

輸出検疫対策として、これまで知見の乏しかった輸出の際に問題となる植物寄生性線虫相を調査した。その結果、一般的な農作物とは異なり、植木・盆栽類では検疫有害動植物に指定されているオオハリセンチュウの寄生が多いことを明らかにした。

植木生産組合や輸出業者と連携してオオハリセンチュウに効果的な薬剤の選抜や輸出条件下における処理方法の検討を行い、処理・輸送後に検出をほぼゼロにできることを実証した。

輸出に取り組む産地支援のため、県内で初確認されたイヌマキの害虫ケブカトラカミキリの発生時期推定法を確立し、適期防除による防除期間の短縮・効率化を実現した。さらに、現場での防除時期判断を可能にする防除支援システム「けぶかとらなび」を開発・公開した。

ケブカトラカミキリ防除には高濃度の薬剤散布が必要だったが、低濃度で効果的な新たな薬剤の実用化により、低コスト化を実現した。

輸出前の線虫対策は国内の多くの輸出用植木・盆栽産地で普及しているほか、ケブカトラカミキリ防除対策は県の緊急防除事業で活用され、これらの成果は輸出拡大と植木生産の安定化に大きく貢献している。

背景

本研究では、植木・盆栽類の輸出促進を図るため、輸出の阻害要因となっている植物寄生性線虫と、安定的生産を妨げているケブカトラカミキリの防除手法開発に取り組んだ。

研究内容・成果

植木輸出のさらなる推進に向けて

線虫検出リスクをさらに低減する手法の開発に加え、栽培期間短縮や古木の再生などの新たな栽培手法の確立、輸送方法の最適化などの流通手法の確立を目指す。

各分野の連携強化により、苗生産から輸送までの一貫した安定生産・輸出システムの 実現が期待される。

伝統的植木・盆栽産地の振興や日本ブランド強化を通して、伝統文化の保全と強い農業の実現に寄与する。

主要論文・特許

?「 千葉県におけるケブカトラカミキリ Hirticlytus comosus (Matsushita)(コウチュウ目:カミキリムシ科)のイヌマキからの脱出消長と脱出開始時期の推定」、日本応用動物昆虫学会誌 Vol.56. 68-71 (2012)

?「千葉県の主要植木・盆栽類根域土壌における植物寄生性線虫相」、日本線虫学会誌 Vol.43. 31-35 (2013)

?Control of the dagger nematode Xiphinema brevicolle (Dorylaimida:Longidoridae) in wrapped root balls of the Japanese holly Ilex crenata(Celastrales: Aquifoliaceae) by drenching in a fenitrothion or benomylsolution. Nematological Research Vol. 45. 27-33

受賞評価のポイント

植木・盆栽類の輸出時に問題となる植物寄生性線虫の薬剤防除技術を開発するとともに、イヌマキの害虫ケブカトラカミキリについて、防除適期の推定方法及び生産者自ら防除適期を判断できるシステムを開発・公表し、輸出拡大と植木生産の安定化に大きく貢献している点が高く評価された。

連絡先

千葉県農林総合研究センター

住所:〒266-0006 千葉県千葉市緑区大膳野町808

TEL:043-291-9991

お問合せ先

農林水産技術会議事務局研究調整課

代表:03-3502-8111(内線5810)
ダイヤルイン:03-3502-7399
FAX番号:03-5511-8622